こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ホワイト・プラネット

otello2006-06-28

ホワイト・プラネット LA PLANETE BLANCHE

ポイント ★★*
DATE 06/5/12
THEATER 東芝エンタテインメント
監督 ティエリー・ラゴベール/ティエリー・ピアンタニダ
ナンバー 71
出演 ///
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


闇に閉ざされた冬、動物たちが活動を始める春、分厚い氷が音を立てて融ける白夜の夏、そして迫りくる長い冬の準備に忙しい短い秋。過酷な自然条件の中で北極圏に生きる動物たちを1年にわたってフィルムに収めた根気と労力は感じられるのだが、登場する動物が多岐にわたるため感情移入が難しい。自然界で最も感動的な「生と死」というイベントにスポットを当てるべきところを、北極圏というあまりにも広大な地域を対象としたため散漫な印象になってしまった。


冬、ホッキョクグマのメスは氷の穴に篭り出産、100日もの間飲まずず食わずで子グマに乳を与え続ける。春、穴を出た母子は雪原を走り狩にいそしむ。夏、雪原が狭まり食糧不足が母子を襲う。秋、成長し狩りを覚えた子グマは親離れをし、ひとり旅立っていく。


ホッキョクグマだけでなく、アザラシ、セイウチ、クジラ、ジャコウウシ、ウミガラスなどが登場する。それぞれ、生存し、子孫を残すために敵と戦い自然と共生する。大地を埋め尽くすような数のカリブーが餌を求めて大移動するさまは圧巻。また空中を飛ぶのと同じように海中でも羽ばたいて餌を求めるウミガラスの優美な姿は官能的に美しい。イッカクという長い角のような牙を持つ珍しいイルカはその姿をとらえただけでも貴重な映像だ。ただ、そこから何らかの感動を生むかというと否定的にならざるを得ない。


ドキュメンタリーといえば「皇帝ペンギン」の印象が強いせいか、出産と子育てという命のリレーにテーマを絞ったほうが物語性を持たせられたのではないだろうか。たとえばホッキョクグマの子の誕生から成長、旅立ちまでに焦点を当てるとか。地球温暖化によってこの作品で描かれた氷の大地が年々縮小しているといわれてもあまりピンと来なかった。


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