こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

レイヤー・ケーキ

otello2006-07-07

レイヤー・ケーキ LAYER CAKE

ポイント ★★★
DATE 06/6/22
THEATER ソニー
監督 マシュー・ヴォーン
ナンバー 98
出演 ダニエル・クレイグ/コルム・ミーニイ/ケネス・クラナム/ジョージ・ハリス
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


裏切りと欺瞞、そして絶体絶命の危機。そんな状況から知恵と行動で敵を出し抜き一発逆転を狙う主人公はクールで小気味よい上、行使される暴力も限定的で必要以上の血は流さない。銃弾よりも知略で稼ぎ、待ち構える落とし穴を回避し、罠には罠を仕掛ける過程をスタイリッシュな映像で追う。だが、登場人物が多すぎるだけでなく、人物紹介にほとんど時間を割かないので相関図がなければ理解しづらいのではないだろうか。脚本のアイデアはよいのだが、物語を途中でさかのぼれない映画のストーリーとしては複雑すぎる。


男は不動産仲介をしながら、裏では麻薬を扱っている。ある日、ボスから友人の娘を探せという命令と、セルビア人から奪ったドラッグを売りさばけという命令を受ける。そのどちらにも失敗した男は、殺し屋に身を狙われる羽目になる。


信頼していたボスが、切れる部下のカネを横取りした上に消そうとする。その計画を知ったときから、男はより用心深くなり血で手を汚すことも厭わなくなる。分りやすいセルビア人ギャングとは裏腹に、腹に一物抱えたイギリス人のドン。必要とあらば嘘をつき、平気で人を殺さなければ生き残れない。若いうちに引退しようなどという甘い考えは通用しない世界であることを男は身を持って知る。所詮ドラッグの取引など、ビジネスなどというきれいごとでは収まりきらないことを映画は訴える。


結局、男はセルビア人をうまく丸め込み、おまけにドラッグも手に入れて一気に事態を解決する。しかし終盤展開を急ぎすぎたせいで、物語はご都合主義に陥っている。敵の次の手を読み先手を打つというところがこの種の映画のカタルシスのはずなのに、短いカットで簡単に描くだけだ。そのからくりをきちんと描いていないので、竜頭蛇尾な印象を払拭できなかった。


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