こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ブレイブストーリー

otello2006-07-18

ブレイブストーリー


ポイント ★*
DATE 06/7/10
THEATER 池袋東急
監督 千明孝一
ナンバー 110
出演 ///
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


普段コントローラーを操って遊んでいるロールプレイングゲームの中に生身の人間がプレーヤーとして入っていく、という原作の設定をなぜ省いたのだろう。ゲーム中のキャラクターも喜びや悲しみ、痛みや苦しみを味わうということを主人公に理解させることで、現実世界で命の大切さや人の気持ちを分る人間になろうという主張を殺している。これではマトリックスをヴィジョンに、ネオをワタルに置き換えただけの子供向け「マトリックス」ではないか。しかしそこにはめくるめくような斬新さも目を見張るような美しさもなく、アニメならではのアイデアも希薄。結果として煮え切らない作品になってしまった。


両親の離婚、母の過労入院で独りぼっちになったワタルは、同級生のミツルに教えられた運命を変えることのできる世界・ヴィジョンに足を踏み入れる。そこは下界から来た人間が5つの宝玉を手に入れることで運命の女神が願い事をかなえてくれるという。ワタルは簡単な装備を与えられ、宝玉探しの旅に出る。


精神的肉体的に未熟な少年が旅を通して成長していくはずなのに、ワタルは最初から最後までほとんど運頼み。自分の智恵と勇気と努力で困難に打ち勝っていってこそ共に行動する仲間や協力者も現われるのに、ワタルはそういう苦労をほとんどしない。砂漠で獣に襲われても突然キ・キーマというトカゲ男に救われるし、謎の司教の罠にはまりそうになったときも少女の声に助けられる。ここまでくるとご都合主義にしか見えない。


結局ワタルはハードルをすべてクリアし、運命の女神の下にたどり着く。しかしヴィジョンは崩壊寸前。ワタルは自分たち家族が元のように仲良く生活ができるように願う代わりに、ヴィジョンを救うことを女神に望む。個人的な幸せより仲間と多くの人々の救済を選択する。映画はかろうじてワタルが成長したことを示唆するのだが、彼の心の葛藤を描写するシーンが少ないせいで最後まで感情移入できなかった。


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