こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ディセント

otello2006-07-20

ディセント THE DESCENT


ポイント ★★*
DATE 06/5/10
THEATER 東芝エンタテインメント
監督 ニール・マーシャル
ナンバー 69
出演 シャウナ・マクドナルド/ナタリー・メンドーサ/アレックス・リード/ノーラ・ジェーン・ヌーン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


あっと驚く展開には違いないが、「こんなんアリ!?」と思える誰も考え付かないようなばかばかしいプロット。これを大真面目に撮られると、もはや怖さよりも失笑を漏らしてしまう。それでも最後までテンションを落とさなかったのは見事。暗闇の中、松明の火に浮かび上がった数十の地底人の白い肉体は圧巻だった。


事故で夫と娘を一度に失ったサラは一年後、5人の女友達と共に洞窟探検に出かける。そこは地図にもない人跡未踏の洞窟だったが、一行が奥に進むうちに落盤に合い、退路を立たれる。出口を求めてさまよううちに、サラは奇妙な生き物に追われていることに気づく。


息の詰まるような洞窟の閉塞感や突然現れる切り立った崖、崩落によって閉じ込められ、わずかな風の流れだけを頼りに脱出口を捜すシーンは緊迫感があり、それだけでも十分にスリリング。そんな極限状態の中で徐々に人間関係が壊れていき、疑心暗鬼の中で人間のエゴが丸出しになるというセオリーどおりの物語では観客は満足しないと思ったのだろうか。前半部分だけで十分に閉所恐怖症になるような表現テクニックをみせていたのに、地底人が現われた瞬間からゲテモノホラーになってしまう。


四つんばいで洞窟内を自在に動き回り、退化した目ではなく音で他者の存在を知る地底人。凶暴な肉食で噛み付いて人間や動物を襲う。しかし、彼らに関して何の説明もないのなら、何も人間の形をしている必要はあるまい。洞窟に絵があったことから、その昔は目が見えていたが洞窟で暮らすうちに退化したのか。舞台は人里はなれた山林とはいえ21世紀の米国なのだ。地底人の存在理由、たとえば彼らの祖先が白人の虐殺から命からがら逃れた先住民だったとか、宗教的な迫害から逃れた異端だったとかが必要なはず。その部分を省いては、やはり地底人の登場はあまりにも唐突だと感じざるを得ない。


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