こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

日本沈没

otello2006-07-21

日本沈没


ポイント ★★
DATE 06/7/18
THEATER 池袋HUMAX
監督 樋口真嗣
ナンバー 113
出演 草なぎ剛/柴崎コウ/豊川悦司/大地真央
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


日本のVFX技術の粋を集めた火山の噴火、津波、そして日本列島の沈没。鳥瞰図だけではなく、避難民が突然割れた地面に落ちたり土砂崩れに飲みこまるシーンなど思わず身を乗り出してしまうほどのリアリティがスクリーンからあふれ出す。それに引き換え俳優陣の手薄なこと。草なぎは日本を救うヒーローにしては線が細いし、トヨエツはどう見てもマッドサイエンティスト大地真央は日本の最高責任者にしては貫禄もないし押し出しも弱い。


大規模な地殻変動地震や火山噴火が続発、日本列島は1年以内に海底に沈むという衝撃的な事実が発覚する。日本国民は海外避難を余儀なくされるが半数以上は逃げられない。田所博士は海底プレートに爆弾を打ち込み沈没を防ぐ作戦を提案、深海艇操縦士・小野寺が決死の覚悟で深海に向かう。


主人公の小野寺を自己犠牲に陶酔するタイプではなく、小心な技術者として描いているところに好感が持てる。自分の命が惜しいのに、最後には自分しか日本を救えないという使命感から任務を全うするという潜水艇操縦士。しかし、愛するもののためという大義名分が、まだ結ばれてもいない恋人と偶然救った少女という設定にほとんど現実感はない。どうせなら、心に深い傷を負って死に場所を探しているような中年男が、最後に死に花を咲かせるというくらいの説得力はほしい。


さらに小野寺の恋人が女性レスキュー隊員というとんでもない飛躍。屈強な男にしか務まらない危険な仕事を柴崎コウが演じるだけでもばかばかしいのに、山間部に孤立した避難民のもとに駆けつけるシーンでは救助するのは全員親戚知人。彼ら発見するだけでも困難なはずなのに、身内優先では公私混同もはなはだしい。恋人も少女も小野寺の本当の妻子という設定にしておけば無理なく物語に溶け込めるのに、若い観客向けに不自然な関係にしてしまったことが映画を沈没させる原因になってしまった。


↓メルマガ登録はこちらから↓