こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト

otello2006-07-24

パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト
PIRATES OF THE CARIBBEAN:DEAD MAN'S CHEST


ポイント ★★*
DATE 06/7/15
THEATER ワーナーマイカルつきみ野
監督 ゴア・バービンスキー
ナンバー 112
出演 ジョニー・デップ/オーランド・ブルーム/キーラ・ナイトレイ/ビル・ナイ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


スクリーンからほとばしる疾走感に時間がたつのを忘れてしまう。しかし映像は薄っぺらな上、情報を詰め込みすぎているせいで物語に奥行きをまったく感じさせない。その上、海棲生物に寄生されたような新たなキャラクターたちの容貌が、ジョニー・デップ扮する主人公以上に奇異。これでは、新鮮味のなくなったスパロウ船長の個性を殺しているだけでなく、奇想天外な冒険譚を怪物が跳梁跋扈する悪趣味な奇伝に貶めているだけだ。さらに、3作目に結論を持ち越すという悪しき商業主義がここでもまかり通っている。


スパロウは幽霊船の船長・デイヴィ・ジョーンズに借りを返す約束をするが、それが不可能だとわかると、デイヴィの心臓が収められているという宝箱を手に入れて負債を清算しようとする。そこにウィル、エリザベスらも巻き込まれ、裏切りと欺瞞に満ちた争奪戦が繰り広げられる。


ずる賢い悪党なのに豪胆で行動力も抜群という海賊の船長・スパロウのパーソナリティがこのシリーズ最大の魅力のはず。なのにここではスパロウの奇人ぶりを示すエピソードは、島の原住民に捕らえられて神とあがめられるシーンのみ。丸焼きにされる寸前で何とか逃げ出すのだが、背中に竹棒をくくりつけたままの大立ち回りも手に汗を握るというより笑えないコメディを見ているような冷めた気持ちになる。その他、酒場での大乱闘、宝箱をめぐっての三すくみの殺陣など、無理やりとってつけたようなアクションのためのアクションという悪循環。もう少しじっくりと腰を落ち着けて、心臓にまつわる伝説や宝箱を手に入れるための手段を検討する場面を挿入するなど展開に緩急をつけないと思考停止に陥ってしまう。


そして結局、スパロウはデイヴィの操る大タコとの闘いで姿を消し、彼を探すために前作でのライバル・バルボッサを登場させるという奇策で締めくくる。ここまで来るとご都合主義としか言いようがない。それをごまかすために考える暇を与えない構成にしているのだろう。


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