こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アルティメット

otello2006-07-27

アルティメット BANLIEUE13

ポイント ★★★
DATE 06/5/18
THEATER アスミック・エース
監督 ピエール・モレル
ナンバー 75
出演 シリル・ラファエリ/ダヴィッド・ベル/ビビ・ナセリ/トニー・ダマリオ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


壁を伝い、屋根を跳び、自動車と競走し、そして闘う。人間の身体能力の極限に挑むというコンセプトの前では、物語など付け足しに過ぎない。むしろその荒唐無稽さを楽しむのが正解だ。スピードと高さと力強さとしなやかさ。それらを兼ね備えた俳優によるパフォーマンスは潔い清清しさを感じさせる。CGやワイヤーアクションといった特撮技術に頼らない筋肉の躍動と心臓の鼓動がフィルムに叩きつけられ、スクリーンではこの作品の作り手たちの熱い想いがストレートに弾ける。


犯罪者のゲットーと化したパリ郊外。盗まれた時限爆弾を解除しようとするダミアンと誘拐された妹を奪還しようとするレイトが、共通の敵であるギャングのボスの下に潜入する。しかし、そこは武装した多数のチンピラに守られた要塞だった。


レイトがギャングに追われながらも反対にボスを人質にとって逆転し、ダミアンが単身地下カジノに潜入し殲滅してしまうというプロローグはまさに圧巻。ここでレイトの体重を感じさせない身の軽さと、ダミアンの強靭な肉体および格闘術の洗練をイヤというほど見せ付ける。レイトの身のこなしはジャングルに住む野生動物の敏捷さ、ダミアンの戦いはプログラムされたサイボーグの正確さ。もはや人間業とは思えないレベルの驚異的なアクションには目を見張るばかりだ。


しかし後半は、この2人が同じターゲットを仕留めるために共同戦線を張るが、協力するのではなく各自が自分の特技を披露するだけ。2人が協力してより大きな効果をあげるのではなく、あくまで単体勝負だ。大巨人相手の格闘も別々だし。やはり2人が力を合わせて、ひとりではできないような壮大かつ奇抜なスタントのアイデアを見せてほしかった。


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