こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

花田少年史

otello2006-08-21

花田少年史


ポイント ★★
DATE 06/7/7
THEATER 松竹
監督 水田伸生
ナンバー 108
出演 須賀健太/篠原涼子/西村雅彦/北村一輝
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


ワンパク少年が巻き起こすドタバタとしみじみとした親子の愛をからませた「笑いと涙の人情劇」というコンセプトは明快だが、幽霊の超能力に頼りすぎたため物語が後半破綻をきたしている。命の大切さ、死んだ人間の思い、生きているもの同士の葛藤などをコメディタッチの中にまぶすという伝統的な手法も、ディテールの甘さが原因で雑な仕上がり。いかにも純朴な田舎の子供というスキンヘッドの主人公を演じた須賀健太の熱演が、このちぐはぐな物語を引っ張っている。


小学3年の一路は交通事故に遭い、天国に行く途中に少女の幽霊に救われる。それ以後、幽霊と話ができるようになった一路は、死んだ近所の婆さんに犬の世話を頼まれたり、友人の父親のメッセージを伝えたりする。ある日、一路の父に恨みを持つ男の幽霊が現れる。


そもそも一路が交通事故に遭う原因を作った少女の幽霊の動機はなんだったのか。一路の事故が偶然で、彼女がかつて自分を育ててくれた一路の両親の恩に報いるために一路を天国から引き戻したというのなら筋が通るが、一路をこんな危険な目に合わすのはヘン。大体、東京で死んだはずの少女の幽霊がなんで広島の田舎に出没するのか。一路の両親を慕ってというのなら、何も通行人を驚かせる必要はあるまい。この少女の幽霊が持つ悪意が物語をぶち壊している。


一路の親友の死んだ父が思いを伝えるシーンや、意識を失った一路を必死で見守る母親の姿など、ほろりとさせるシーンは随所にある。しかしそれらのエピソードに一貫した連続性はなく、感動を押し上げるという水準まで行っていない。しかも、クライマックスでは男の幽霊が一路の友人の父親に乗り移り、一路の父を殺そうとするのだ。なぜか嵐の海に船を出させるという回りくどい方法をとって。この危機を乗り越える方法もまったく子供だまし的な幼稚さで、最後には目を見張るような視覚効果で何とかごまかそうとする。悪霊に体を乗っ取られたおっさんの後始末もせずに。せっかく俳優たちもロケ先の住民もがんばっているのに、肝心の脚本がお粗末では救われまい。


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