こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

マッチポイント

otello2006-08-25

マッチポイント MATCH POINT


ポイント ★★★★
DATE 06/8/21
THEATER シネスイッチ
監督 ウディ・アレン
ナンバー 134
出演 ジョナサン・リース・メイヤーズ/スカーレットヨハンソン/エミリー・モーティマー/ブライアン・コックス
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


本気にならない、結婚の約束をしない、避妊は必ずする。不倫の鉄則をことごとく守らなかったゆえに窮地に追い込まれる男の複雑に絡まった心理が克明に描かれる。寸暇を惜しんで愛人のアパートに赴く狂おしいまでの会いたい気持ち、嘘に嘘を重ねて愛人の嫉妬を何とかやり過ごそうとする愚かさ、そして犯行に及ぶときの動揺。これまでのアレン作品ならばコミカルな演出をしていたはずのシーンが、圧倒的な現実感を伴って見るものの共感を呼ぶ。男のバカな行為の裏側から、出世欲、愛欲、面子といった人間の真実が見事にあぶりだされる。


テニスコーチのクリスはスクール生で富豪の娘・クロエと結婚、義父の経営する会社で出世する。一方でクロエの兄・トムの婚約者・ノラに一目ぼれ、トムとノラが破局した後に偶然再会したクリスとノラは密会を重ねる。やがてノラは妊娠、彼女が邪魔になったクリスは強盗の仕業に見せかけて殺してしまう。


気立てのいい妻がいながらも、魅力的な女に惹かれる。その思いが正気を失うほど息苦しく、女の部屋に入る間ももどかしくてお互いを求め合うクリスとノラ。決して他人に知られてはいけないという不自由さが、さらに2人を燃え上がらせる。ノラも会いたい気持ちを抑えきれずクリスの家や別荘にまで電話をする。もはや理性では抑えきれなくなった愛という名の独占欲が暴走し、2人を蟻地獄に突き落とす。金持ちの婚約者に捨てられた上、女優の夢もかなわず、生活の担保はクリスだけというノラの不安定な情緒も女の心理を突いている。


2人の間で交わされる会話のリアルさが物語に命を吹き込んでいる。いつまでたっても妻に別れを切り出せないクリスを責めるノラ、自分の生活を守りたいけど別れたくないという煮え切らない態度をとり続けるクリス。そんな、世界中の不倫カップルが必ず通る修羅場が何度も繰り返される。やはり経済的に不安のある女は妻の地位を求めるのだ。冒頭に挙げた不倫の鉄則にひとつ付け加えるならば、不倫相手には経済的に自立したプライドの高い女を選べ、ということか。。。


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