こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

親指さがし

otello2006-08-28

親指さがし

ポイント ★*
DATE 06/6/16
THEATER 映画美学校
監督 熊澤尚人
ナンバー 94
出演 三宅健/伊藤歩/松山ケンイチ/永井流奈
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


友人に見捨てられて死んだ女の子が8年の怨念を越えて復讐するという話をホラー仕立ての映画にしたかったのだろう。しかし根本的な設定が稚拙な上、演出も新鮮味がなくインパクトに乏しい。「親指さがし」などという心霊遊びもリアリティに欠け、そもそもその遊びの原点になったという心中父娘のエピソードがまったく生かされていない。夏休みの小学生向けのコワ〜イ話なのだろう、まともな大人が見るにはいささか辛抱が必要だ。


8年ぶりの同窓会に集まった5人組、彼らは小学生のときに由美子という同級生が失踪したことを忘れられずにいた。リーダーの武はもう一度由美子を探そうと、忌まわしい記憶をたどる儀式を行う。しかし、その夜から由美子の復讐が始まり、ひとり、またひとりと親指を切断された姿で惨殺される。


深夜のエレベーターや公衆トイレといった、いかにも幽霊が出そうなシチュエーションでおどろおどろしい効果音とともに恐怖心を逆なでする技法は教科書どおりだし、俳優たちの演技も分りやすい。これはもはや安物の深夜テレビドラマのレベルだ。それでも、現在の恐怖と過去を洗いなおす作業を並行して進めるためにそれほど退屈しない。しかし、それは次々と提示される謎が有機的に結びついていればの話で、事件の解決になんら寄与しないのでは肩透かしもいいところだ。親指探しのルーツを探す過程でもうひとひねりするくらいの工夫はほしい。


結局、8年前の失踪は事故で、自分を責め続けていた武の別人格が殺人鬼に変身していたというあほらしいオチ。大体ホテルの通気ダクトがなぜ客室で行き止まっているのか。また、警察も事件があった建物を普通は調べるだろう。Jホラーといえば国際的に通用するブランドのはずなのに、実体はこんなストーリーを映画化しなければならないほど行き詰っているのだろうか。


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