マイアミ・バイス MIAMI VICE
ポイント ★★*
DATE 06/8/14
THEATER UIP
監督 マイケル・マン
ナンバー 130
出演 コリン・ファレル/ジェイミー・フォックス/コン・リー/ナオミ・ハリス
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
手持ちカメラを多用した不安定な映像は臨場感に溢れ、銃撃戦シーンではまるでその場にいるかのような迫力。その緊迫感は麻薬組織と戦う潜入捜査官の怒り、興奮、緊張といった息遣いとしてスクリーンからダイレクトに伝わってくる。反面、物語の構成は単純な上、説得力に乏しく、主人公たちのキャラにも人間的な奥行きがない。潜入捜査という騙しあいのゲームを演じるのだから、裏切りや罠、疑心暗鬼といったミステリーの要素をもう少し取り入れたほうが面白くなったはず。撮影技術には凝っているのに、肝心の脚本に力が足りない。
マイアミの刑事、ソニーとリコは運営していた情報提供者が死んだことから麻薬カルテルを摘発する潜入捜査に参加。早速ニセの身分を作り、運び屋として組織に接触する。そこでイザベラという美しい秘書が彼らを待ちうけ、ソニーは彼女と恋に落ちる。
何ゆえ南米の麻薬カルテルとの戦いなどという古臭いテーマを選んだのだろう。そこにあっと驚くような新たな輸送手段やマネーロンダリングのテクニックなどが盛り込まれているならまだしも、今日的な要素は皆無。また、潜入捜査官が感じるはずの不安や葛藤とも無縁で、犯罪組織にコンタクトする過程にまったくリアリティが感じられない。人間の心理に対する掘り下げがとても甘いので、登場人物には誰一人として共感できなかった。
また、組織のボスの秘書・イザベラの存在もほとんど意味がない。彼女に特殊な能力があるのならまだしも、ソニーと寝た上にころっと信用してしまうのだ。ボスの側近でありながらなんという無防備かつナイーブなこと。体を張ってソニーの正体を暴こうとしているのならともかく、ソニーに手玉に取られるという体たらくだ。東洋風のなぞめいた風貌とは無縁のただのバカ女ではないか。この女がもう少ししたたかに立ち回って、なんらかのどんでん返しが用意されていれば満足したが、脚本家はそこまで頭が回らなかったようだ。