こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

グエムル 漢江の怪物

otello2006-09-06

グエムル 漢江の怪物

ポイント ★★*
DATE 06/9/2
THEATER 109グランベリーモール
監督 ポン・ジュノ
ナンバー 144
出演 ピョン・ヒボン/ソン・ガンホ/ペ・ドゥナ/パク・ヘイル
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


日常の平和な風景を切り裂くように突如として現れた怪物は、人々を喰らい食料として連れ去る。エイリアンのように凶暴でUSAゴジラのようにすばやく走り、泳ぐ。それは環境を汚染した人間に対する自然からの復讐なのか、突然変異した生物の進化なのか。映画は怪物の正体に関する答えをあいまいにしたまま怪物に娘をさらわれた家族の戦う姿を通じて、愛するものへの強い思い、生き残るための勇気を描こうとする。しかし、余計なエピソードが多く映画のスピードを殺いでいる。


ソウル・漢江の河川敷で売店を営むパク一家の娘・ヒョンソが突如現れた怪物・グエムルにさらわれる。グエムルに接触したものはウイルス汚染を防ぐために隔離され、パク一家も病院に収容されるがヒョンソの父・カンドゥの携帯にヒョンソから連絡が入る。一家はヒョンソを救うために病院から脱出・漢江の下水溝を探し回る。


グエムルに知性は感じられない。ただ食欲を満たすためだけに人を襲う。そして、カンドゥは店番もまともにできないアホ。彼も高度な知性の持ち主ではないが娘を思う気持ちは人一倍強い。映画は、グエムルの食欲とカンドゥの愛という、動物が持つ本能と本能の戦いとしてクライマックスを迎える。その部分だけにスポットを当てるだけだとあまりにも通俗的になると判断したのだろう。真実を隠そうとする政府組織に追われたりするのだが、政府と米軍の陰謀という観点からの描き方がまったくもの足りず消化不良を起こしている。


結局、カンドゥ3兄弟とホームレスの連携でグエムルを倒すことに成功するのだが、ヒョンソは命を落とし、カンドゥはヒョンソとともにグエムルに捕らえられていた少年を養子にする。ラスト、血のつながらない父子の食卓には、質素だけれども大きな暖かさが漂っている。自分のことよりも他人を思いやり、愛するものに対して犠牲をいとわない気持ちを失わないものが最後に勝つというあまりにも愚直なメッセージ。それでも毒を川に流したり、真実を隠蔽しようとした者が何の制裁も受けないというのはどういうことだろう。グエムルを悪の権化とするならば、その原因を作り、結果を悪用しようとした人間の末路をきちんと描いてこそ物語のメッセージも明確になるのはずだ。


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