こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ユア・マイ・サンシャイン

otello2006-11-05

ユア・マイ・サンシャイン


ポイント ★★*
DATE 06/9/4
THEATER メディアボックス
監督 パク・チンピョ
ナンバー 145
出演 チョン・ドヨン/ファン・ジョンミン/ナ・ムニ/ソ・ジュヒ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


愚直なまでにストレートな愛も、エイズなどという不治の病も、明らかに時代遅れの素材。しかし、主人公が妻を思う強烈なエネルギーの前ではそのベタな古さこそがかえって新鮮に見える。ひたすら妻のすべてを受け入れ愛おしむ男の純粋なまでの気持ちはもはやおとぎ話の世界。それでも、あらゆる雑音をはねのけるそのひたむきな心は、ダイヤモンドの美しさと硬さを併せ持つ。人は人をどれだけ愛せるか。そんな、語りつくされたテーマを敢えて真正面からとらえ、大上段から描こうとする。韓国人も純愛に餓えているのだろうか。


嫁不足で悩む寒村の牧場で働くソクチュンは道ですれ違ったウナに一目ぼれ。ウナが売春婦と知りつつソクチュンは愛をささげ、やがてウナも心を開いていき、2人は結婚する。そんな時、ウナの前夫が現われた上、ウナがHIV陽性という知らせがソクチュンの耳に入る。


売春婦であっても男がいてもHIVキャリアであっても、ソクチュンのウナに対する愛は微塵もぶれない。果たして人間は一目ぼれした相手にここまで一途になれるものなのか。ただただウナにそばにいてほしいというソクチュンの打算がない思いは神聖な領域に達している。恋に落ちるのに理由や理屈は要らないことは理解できるが、ソクチュンの気持ちに説得力は薄い。せめて子供のときに夢見たマドンナとウナがそっくりだったとか、死別した恋人と目がそっくりだったとかいった伏線を用意しておくべきだろう。


ソクチュンの元を去ったウナはHIVとは知らず体を売り、売春容疑で逮捕され服役する。面会室で2人が愛を確認しあうシーンにはもはや説明も理屈も不要。感情だけがほとばしり、お互いを離したくないという気持ちは何人も引き裂けない。ここまで何のてらいもなく、正攻法で不器用なまでの愛の勝利を謳いあげる作品の潔い勇気には清清しさを覚えた。


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