こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

めぐみ

otello2006-12-01

めぐみ ABDUCTION

ポイント ★★*
DATE 06/11/28
THEATER シネマGAGA!
監督 クリス・シェリダン/パティ・キム
ナンバー 207
出演 横田滋/横田早紀江/増元照明/
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


突然姿を消した娘の生存、そして再会だけを信じて運動を続ける年老いた父と母。街角でビラを配り、署名を集め、講演会で訴える。その一途なまでの執念が人に伝わり、後援会を組織させ、国に訴え、総理大臣までも動かす。北朝鮮という犯罪国家による一般市民の拉致問題、その運動の最前線からのレポートは生々しい緊張感を持って見るものに迫る。しかし、もともと日本以外の国に向けて作られた作品なのだろう、日本に暮らして普通に新聞・テレビ等の報道、雑誌・書籍などの出版物に触れていれば得られる情報ばかり。映画だけが知りえた真実がなく、関係者への突っ込みも甘い。


'77年11月、新潟の中学生・横田めぐみが失踪、当初は家出とされるが後に脱北工作員の告白で北朝鮮による拉致と発覚。両親はワイドショーに出演して捜索を願うが警察は相手にしない。やがて家族会を結成して政府に働きかける。


拉致を最初に報じた新聞記者、特番を作ったテレビ局プロデューサー、そして脱北工作員。しかしめぐみの安否は北が出す情報だけが頼り。しかも北は日本政府に揺さぶりを賭けるようにめぐみのニセ遺骨や成人後の写真、めぐみの娘までを小出しにして取引の材料にする。これらの情報のウラで北が日本政府にどんな裏取引を持ちかけたのか。監督がジャーナリスト出身というなら、そこを明らかにしてほしかった。


めぐみが生きているのか死んだのか、いまだに分らない。それでも両親は生存を信じている。それでもあきらめかけたことや、方針の違いから他の家族会メンバーとの軋轢もあったはず。そんな両親の葛藤や人間的な一面も描かれていれば、もっと奥行きが出ただろう。訪朝し金正日と会談した小泉総理の横に寄り添う安倍官房長官。彼こそ対北強硬派のまとめ役で家族会の希望だったのに、総理になった今、拉致問題は解決に向けて進展しているとはいいがたい。何より言葉に歯切れがなくなった安倍総理にこそ、もう一度行動を起こしてもらいたいと思った。


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