こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ファースト・ディセント

otello2006-12-25

ファースト・ディセント FIRST DESCENT

ポイント ★★*
DATE 06/11/16
THEATER 映画美学校
監督 ケビン・ハリソン/ケンプ・カーリー
ナンバー 198
出演 ショーン・ホワイト/ハンナ・テーター/テリエ・ハーコンセン/ショーン・ファーマー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


人跡未踏の雪山に鮮やかなシュプールを残す。そこはアラスカの峻険な山岳地帯。ほぼ垂直に切り立った断崖にの頂上から一気に滑り降りる。抜けるような青空を背景にした純白の新雪をジグザグに切り裂きながら滑降するさまは、限界に挑む人間の意志とパイオニアたらんという冒険心、スリルと楽しさが満載だ。しかし、そこに至るまでにスノボの嚆矢から発展という数十年の短い歴史を織り込み、時間を稼ぐ。ライダーたちの人間的な魅力もあまり描かれておらず、カフェレストランの環境映像のようだ。


スノーボーダーの聖地・アラスカのバルディーズに集まった5人のトップライダーたち。13日間にわたってキャンプを張り、征服すべき斜面をヘリで探す。そして、伝説のライダー・テリエは世界一の難易度を誇る峰・7601に挑む。


神々しいまでの自然の美しさ。そしてその美しさの裏にある人間を寄せ付けない厳しさ。だからこそライダーの心を刺激し、山にとって初めての男になるべく命を危険にさらす。規則にとらわれず自由を追い求めた結果スキーよりスノボを選んだ彼らも、自由であり続けるためには常に進化しなければならない。だがその過程はスノボの流行を捕らえているだけで「歴史の教科書」のレベルを出ていない。このあたり関係者にインタビューするなどもっと踏み込んだ取材をしてほしかった。


クライマックス、テリエが7601の頂上から身を躍らせるシーンは圧巻。途中、バランスを崩したり岩がむき出しの地形に出くわしたり。山の麓と中腹、そしてヘリのカメラが彼の動きを逐一捕らえる。まるで彼の緊張と陶酔、そして闘争心と達成感までカメラに収めようかとするようなファインダー越しの熱意がスクリーンを越えて伝わってくる。ただ、映画の構成がそこに至るまでに中だるみが多く、上映時間をもう少し短く刈り込んでもよかったはずだ。


↓メルマガ登録はこちらから↓