こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

恋人たちの失われた革命

otello2007-01-12

恋人たちの失われた革命 LES AMANTS REGULIERS


ポイント ★*
DATE 06/10/19
THEATER メディアボックス
監督 フィリップ・ガレル
ナンバー 179
出演 ルイ・ガレル/クロティルド・エスム/エリック・ルリヤ/ジュリアン・リュカ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


しっとりと落ち着いた夜と陰影が際立つ昼。パリの石畳や古い建物はモノクロームのフィルムに成熟した印象を残し、街の息遣いを伝える。しかし、この映画の若者たちが体験する革命という祭りと、その後の現実の落差は映像ほどのコントラストはなく、ただただぬるま湯のような日常が描かれるだけ。この程度のストーリーに3時間以上費やすのは時間の無駄以外何ものでもなく、観客は苦痛に近い我慢を強いられる。もっと物語を凝縮しテーマを絞り込まなければ、作家の自己満足的なアートフィルムの域を出ることはできない。


'68年、革命に燃えるパリで、20歳の詩人のフランソワは機動隊との戦いに明け暮れていた。そして、徴兵を拒否することで一応、権力に対して勝利したと思い込む。その後、フランソワと怒りの対象を失った革命の若者たちはアヘンに溺れ自分を見失っていく。


バリケードをつくり火炎瓶を投げ、狭い路地を逃げ回る若者たち。彼らの言う「大衆」とはいったい何者なのか。まだまだマルクス毛沢東の思想が生きていた時代、世の中を変えようというエネルギーは「大衆」や「労働者」という幻想を生み、戦いに駆り立てる。しかしその実態は「戦争に行きたくない」とか「退屈しのぎ」。それ以上に、自分たちの親の世代が退屈な日常に満足し、やがて自分も同じような人生を歩むのではないかという切実なあせりが革命の動機なのだろう。革命後、目標を失った若者が無為に時間をすごす様子は決して革命の成果には見えない。


その後、フランソワは彫刻家のリリーと付き合い始める。だが、所詮は「自称アーティスト」の域を出ていない。アートを通じて社会を変革しようという高い理想もなく創作の苦悩もない。結局は甘ったれた若造の気ままな日常を綴っただけ。やはりこんなヤツは強制的にでも軍隊に入れて、根性を鍛えなおしたほうがよかったのではないだろうか。


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