こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

愛の流刑地

otello2007-01-17

愛の流刑地


ポイント ★★
DATE 07/1/14
THEATER 109シネマズ港北
監督 鶴橋康夫
ナンバー 8
出演 豊川悦司/寺島しのぶ/長谷川京子/陣内孝則
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


愛されることの幸せ、そして女はその幸せを永遠のものとするために相手に「殺して」と請う。情念に溺れ、もはや理性すら失ってしまいそうな人妻の狂おしいまでの自己愛。寺島しのぶ扮するヒロインは自らの欲望に命を捨てるまでに貪欲で、周りの男を破滅させていく。そんな、オッサンの頭の中にある「チョイもて願望」を性交シーンをふんだんに交えて巧みに映像化しているようで、結局女性の心理はほとんど描けていなかった。


売れない作家の菊治はセックス中に恋人・冬香の首を絞めて殺してしまう。殺人事件として法廷で裁かれるが、その過程で菊治と冬香の情事の全貌が明らかにされていく。冬香との出会い、京都でのデート、2人はやがて抜き差しならぬ状況に堕ちていく。


「殺したくなるほど人を愛せるか」という菊治の主張は、あくまで殺人か嘱託殺人かを争点とする公判とは最後まで平行線。特に織部という女性検事を長谷川京子がアホ丸出しの迷演技で熱演、テクノカットの弁護士とともに、かみ合わない法廷論争をコメディのような趣にしている。タイトなミニスカートにノースリーブのトップ、おまけに潤んだ瞳で被告をにらみつける。こんなセクシーな検事がいたら、きっと裁判も楽しいだろうなと思わせてくれるほどだ。ここまでミスキャストだと、かえって映画が明るくなる。


菊治の心の中で生き続けることを望んだ冬香、その思いを小説に昇華した菊治。冬香のDV夫には同情の余地も少ないが、3人の子供を残してまで菊治の下に走った冬香はやはり自分勝手だ。愛さなければならない子供がいながら、菊治にだけ愛されることを望む。そして自分が死んだら菊治をはじめ周囲の人間に多大な迷惑がかかることを考慮しない。映画は女性キャラクターからリアリティを奪い「もてないオッサンの夢」をひたすら追うが、あまりにも幼稚なメンタリティに思わず失笑を漏らしてしまった。冬香や織部みたいな女、共感されるどころかきっと女性からは嫌われるだろう。


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