こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ディパーテッド

otello2007-01-23

ディパーテッド THE DEPARTED


ポイント ★★★*
DATE 07/1/19
THEATER 109グランベリーモール
監督 マーティン・スコセッシ
ナンバー 12
出演 レオナルド・ディカプリオ/マット・デイモン/ジャック・ニコルソン/マーク・ウォールバーグ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


いざというときは組織の使い捨ての歯車にされることを自覚しながらも、いつ自分の正体がばれるかもしれないという恐怖におびえながら敵対する組織のなかで生き抜いていく。そんな、欺瞞と裏切りの中で精神のバランスを崩しそうになりながらも自らの使命を全うしようとする男たちの姿を「インファナル・アフェア」にほぼ忠実にマーティン・スコセッシはフィルムに焼き付ける。しかし、他人の信頼を食い物にする生き方を選んだ者が堕ちる無間地獄という東洋哲学的な発想はここにはなく、一人の女をめぐる三角関係でお茶を濁している。


警察学校で優秀な成績を修めたビリーは潜入捜査官としてマフィアのボス・コステロの組織にもぐりこむ。一方、コステロが警察に送り込んだコリンも順調に出世し、州警察の要職についている。やがてビリーとコリンはお互いに相手の組織に裏切り者がいることに気づく。


あらゆる仕事を契約という概念で縛ろうとする米国的な発想が、人間の心の奥に潜む懊悩よりもスリルや暴力に重きを置いた映画に変貌させている。コリンは警官として正義に目覚めることはないし、ビリーもギャングの組織から深く信頼されているようには見えない。義理や人情にがんじがらめにされながらも、自分を信頼している人間を売らなければならないという登場人物の苦悩に対する踏み込みが甘く、孤独感に乏しい。同じ境遇におかれたビリーとコリンが、お互いに敵と知りながら共感を覚えるというようなシーンを入れてもよかったはずだ。


しかも、唯一彼らの苦悩を受け止めるべき精神科の女医がなぜかコリンの恋人になってしまう上、ビリーとも情を交わすのだ。かといって彼女が重要な役割を果たすわけでもなく、結局中途半端なまま姿を消してしまう。また、ビリーの正体を知る上司を二人用意したのも少し変に思ったが、マーク・ウォルバーグがラストでこの物語に終止符を打つ役目。深遠な仏教思想的世界観が背景にあった「無間道」3部作を2時間半にうまくまとめてはいるが、やはり物足りなさを感じるのも事実だ。


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