こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

幸せのちから

otello2007-01-29

幸せのちから THE PURSUIT OF HAPPYNESS

ポイント ★★★*
DATE 06/11/24
THEATER ソニー
監督 ガブリエレ・ムッチーノ
ナンバー 204
出演 ウィル・スミス/ジェイデン・クリストファー・サイア・スミス/タンディ・ニュートン/ブライアン・ハウ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


カネもなく、仕事もなく、寝る所もない。小さな子供の手を引いて大きな荷物を持ち、あてもなく街をさまよう。頑張っているのに報われず、絶望的な気持ちになって世の中の仕組みを恨んでしまう。それでも、盗みに手を染めて人間としての誇りを捨てたり、泣き言を言って父親としての威厳を失うようなことは決してしない。努力と才覚しだいで成功できるというアメリカンドリームと、息子をきちんと育てようという決意。不幸のスパイラルのような逆境に立ち向かい、乗り越え、そして何よりも夢をあきらめない。そんな主人公は米国人の好むヒーローそのものだ。


医療器具販売に失敗したガードナーは家を失い恋人にも逃げられる。しかし、息子のクリストファーだけは手放さない。そんな時、投資会社の研修生に選ばれるが、半年は無給で働かなければならなず、ガードナー親子は駅のトイレや救貧院を転々とする。


ヘアスタイル、自動車、ファッション、コンピュータから地下鉄の改札機まで、まるでこの時代に撮影されたかのように1981年のサンフランシスコを忠実に再現している。さすがにこの街のシンボル・ケーブルカーまでは当時のものを用意できなかったのだろう、一切姿を見せない。それでも、そのディテールへのこだわりが映画にリアリティを与え、夢と愛の物語にいっそうの輝きを与えている。子供に満足な食事や寝床を与えてやれない親のつらさ、だがガードナーは絶対に涙を見せない。ふがいない親の切なさが身にしみる。


ガードナーは研修と仕事と子育て、どれひとつ手を抜くことなくやり遂げ、ついに投資会社に採用される。その過程で、あまりにも彼ら親子の身の上に降りかかる不運なエピソードを見せ続けられたので、このハッピーエンドのおかげで救われる。ただ、映画を見ていて、落ちぶれるのも復活するのもすごく速いスピードで展開する米国社会のダイナミックさに驚かされた。


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