こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ルワンダの涙

otello2007-02-05

ルワンダの涙 SHOOTING DOGS


ポイント ★★★★
DATE 07/2/1
THEATER TOHOシネマズ六本木
監督 マイケル・ケイトン・ジョーンズ
ナンバー 21
出演 ジョン・ハート/ヒュー・ダンシー/クレア=ホープ・アシティ/ドミニク・ホロウィッツ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


圧倒的な暴力の前では、何かができるかではなく、なすすべもないという現実。ルワンダ大虐殺を目の当たりにしながら、結局白人青年は傍観者という立場を選び、白人神父は当事者の立場を選ぶ。神父が信じる神は救いの手を差し伸べず、神父も聖書を燃料として焼く。圧倒的な無力感を感じながら、それでも神父のゆるぎない信念が絶望の中でわずかな希望の灯を点し、彼の志を知る者が語り継ぐ。真の勇気とは、自分の良心に従って命の犠牲を恐れないということをこの映画は教えてくれる。


イギリス青年・ジョーはクリストファー神父が運営する学校でルワンダの現地人に英語を教えている。やがてフツ族によるツチ族殺戮が始まり、2000人を超えるツチ族難民が学校に避難してくる。学校には国連軍が駐留しているためフツ族民兵は手を出せずにいるが、やがてルワンダ国内の外国人に退去命令が出る。


国連軍もジャーナリストも、なにもできず最後には逃げ出す。ジョーも仲のよかった現地人・マリーを見捨てることになるが、どんなに苦悩を見せてもやはり白人にとっては他人事。もちろんジョーを責めることはできない。彼自身逃げ出したことで自分を責め続けているだろう。後に無事に脱出したマリーと再会するが、彼女はジョーにとって地獄からの使者に見えただろう。自分が見捨てた人間が生きていて自分に会いに来る。しかも一切攻めるような言葉を口にしない。マリーは無事を知らせるためにジョーを訪ねたのだが、それでもジョーにとってマリーは過去からの亡霊以外の何ものでもない。


結局、学校に避難したツチ族は全員殺され、クリストファー神父のトラックで脱出した数人の子供だけが生き残る。人の評価は何をしたかで決まる。誰もがクリストファー神父のようになれるわけではなく、ジョーのようにわが身を守るのみ。大虐殺の途中で退去したすべての外国人は、ジョーと同じトラウマにとらわれて生きているのだろう。その胸の痛みを忘れないことがせめてもの犠牲者への償いなのだ。


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