こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

華麗なる恋の舞台で 

otello2007-02-12

華麗なる恋の舞台で BEING JULIA


ポイント ★★★
DATE 06/9/20
THEATER スペース汐留
監督 イシュトヴァン・サボー
ナンバー 158
出演 ジェレミー・アイアンズ/アネット・ベニング/ショーン・エヴァンス/ジュリエット・スティーブンソン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


少女のように恋に胸をときめかせる一方で、ライバルは徹底的に叩き潰す。中年を過ぎ、それでも第一線で活躍している舞台女優のすさまじいまでの仕事に対する執念と、子供じみたわがまま、更に胸のすくような復讐。アネット・ベニングが時にチャーミングに、時に凛とした姿を演じ分け、「俳優にとって舞台の上こそがリアル」と言った演出家の言葉を忠実に実行するヒロインを熱演する。物語の中盤までの展開がスピードに乏しいのは年配の観客に対する配慮なのだろうが、ややまどろっこしい。


ジュリアは名実共にロンドン演劇界のトップ女優で、興行主で夫のマイケルは彼女を支えている。ある日ジュリアは、マイケルの元を訪れた米国人青年・トムと恋に落ち、若々しさと舞台への情熱を取り戻していく。そんな時、トムにエイヴィスという新進女優の恋人がいることを知る。


いくら子供の頃からのファンといっても、トムほどの若い男が母親ほどの年齢の女と恋ができるものなのか。確かにジュリアの外見は美しく、精神年齢も若い。しかし、ベッドで横になっている彼女ののどから胸元にかけての無数のシワに、40代後半という年齢の残酷なまでの現実を見せつける。やっぱりこういうところで肉体的な衰えを見てしまうと、男は若い女になびくだろう。そのあたり、自分の思い通りにならない「舞台の外でのリアル」を目の当たりにしたジュリアの子供じみた心理状態を、ベニングは巧みに演じている。


ジュリアは自分の恋人を寝取ったエイヴィスを引き立て、大人の女としての余裕を見せる。夫も脚本家もそれをいぶかしみながらも、新作の公演がうまくいくならと黙認。しかし、本番の舞台ですべてをぶち壊したのに、観客の注目を一心に集め、逆に大成功に導く。これぞ大女優の真骨頂というべき離れ業。すべてのプロットがこのどんでん返しに集約されていく物語の構成は洗練された大人の味わいを感じさせてくれた。


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