こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

口裂け女

otello2007-03-20

口裂け女


ポイント ★★
DATE 07/1/17
THEATER メディアボックス
監督 白石晃士
ナンバー 10
出演 佐藤江梨子/加藤晴彦/水野美紀/川合千春
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


愛しているのに憎らしい。そんなわが子に対する気持ちをうまく制御できない母親がついつい子供に体罰を振るってしまう。しかし次の瞬間には暴力を後悔して抱きしめる。そんな子育てのイライラがさらに暴走し、自分でも止められなくなったとき母親は子を殺し、鬼となる。映画は「口裂け女」という都市伝説に児童虐待を絡ませ現代風な味付けをしているのだが、口裂け女の行動パターンが場当たり的で、ミステリーの要素が少なすぎる。表現上の怖さを追求するだけでなく、恐怖の主体がなぜ暴走を始めたかをきちんと説明しないと、興味は半減する。


神奈川県で口裂け女による児童連れ去り事件が連続、小学校教諭の松崎と山下は自分の教え子が事件に巻き込まれたことから警察とは別に事件を調査する。松崎には口裂け女の声が聞こえ、出没地点がわかるという特殊な能力があった。


現代によみがえった口裂け女のメークがすばらしい。マスクのその下に隠したおぞましい顔は口がスパッと切り裂かれ、傷跡からは肉がはみ出すよう。「ワタシ、キレイ?」と言っているのではなく「私を斬れ」と狂気を抑えきれなくなった自分を呪い、息子に自分を殺させようとした母親の怨念だというのだ。しかし、この口裂け女は子を持つ母に乗り移っては犯行を繰り返すため、殺しても別の肉体に憑りつけばよみがえるとタチのわるさ。結局、子供たちだけでなく、憑依された母親たちも殺されていくという血なまぐさい映画になってしまった。


口裂け女が体をのっとる女たちはみな子供を虐待しているわけでもなく、襲われる子供たちにも共通点はない。ただ、神出鬼没のごとく現れては子供をさらい、大人にはハサミを振りかざすだけ。もっと口裂け女をプロファイリングしていかないと、何も考えのない無分別な幽霊というのではあまりにも寂しい。おどろおどろしい面相も慣れてしまえばインパクト不足だし、ラストのオチも予想通りだ。だいたい、こんな流血が多いと主なマーケットである小学生が見に来られないのではないだろうか。。。


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