こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

デジャヴ

otello2007-03-21

デジャヴ DEJA VU


ポイント ★*
DATE 07/3/17
THEATER 109グランベリーモール
監督 トニー・スコット
ナンバー 53
出演 デンゼル・ワシントン/ポーラ・パットン/ヴァル・キルマー/ジム・カヴィーゼル
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


他人の私生活を覗き見るという悪趣味な行為が生む不快感、過去をいじって現在を変えるというパラドックス。もはやファンタジーでしか通用しないようなプロットを真面目なサスペンスドラマにしたのが最大の失敗だ。彩度を落としたフィルムと早送りを多用して映像を印象付け、スピーディに物語を展開させる前半はトニー・スコットの得意とするところだが、後半はあまりにもお粗末な脚本に演出がついていけなかったのだろう、ありふれたタイムトリップものに堕ちてしまった。


フェリーが爆破され500人以上の犠牲者がでる。捜査官のダグは現場で女の奇妙な死体が発見されたことから、極秘の政府機関が開発した監視衛星で、死の直前の彼女をモニターする。それは4日前をリアルタイムで映し出す機能を持った特殊なカメラだった。


事故現場の遺留品と街中の監視カメラの映像から地道に犯人を特定し追い詰めていくという、セオリーどおりの前半は緊迫感にあふれ、ダグは女の死体から犯人にたどりつこうとする。その過程で殺される直前の彼女に焦点を当てるのだが、その理論が噴飯もの。複数の衛星が赤外線で捕らえた映像を元に再構成して、自由に視点を変えられるカメラとして彼女の部屋に侵入するのだ。映像を見ているダグや他の技術者と映像の中の女の間には4日間というタイムラグ、つまりダグたちは4日前の彼女を見ているのに、彼女が監視されていることに気づいたり、過去の自分にメッセージを送るというアホなシーンまで用意されている。


結局、女の運命を変えようとして過去にトリップしたダグが爆破犯を倒した上、フェリーの爆破も防ぎ、おまけに自分の命を犠牲にして彼女を助けるという八面六臂の大活躍。しかもズブ濡れになって落ち込んでいる女のもとに、物語の最初に戻ったダグが現れてめでたしめでたしという人を食った大団円には失笑を漏らしてしまった。やっぱりコレ、どう考えてもコメディにするべき題材だろう。


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