こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ママの遺したラヴソング

otello2007-04-12

ママの遺したラヴソング A LOVE SONG FOR BOBBY LONG

ポイント ★★
DATE 07/4/10
THEATER シネスイッチ銀座
監督 ジェイニー・ゲイベル
ナンバー 70
出演 ジョン・トラボルタ/スカーレット・ヨハンソン/ゲイブリエル・マック/デボラ・カーラ・アンガー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


失われた親子の絆、そしてその絆を取り戻すかのような擬似家族。2人の男と1人の少女、愛と友情と孤独がひとつ屋根の下に同居する。人生に疲れてアルコールに溺れていた男は、寂しさを紛らわせるために自堕落な生活を送っていた少女に希望を与えることで再び生きることに前向きになる。しかし、その過程において、亡くなった少女の母親の影が色濃く反映されている割には、少女は母親に興味を示さない。なぜもっと、積極的に自分の母親のことを知ろうとしないのだろう。


母・ロレーンの訃報を聞いたパーシーはニューオーリンズに駆けつけるが、すでに葬儀は終わった後。ロレーンの住所を訪ねると、ボビーという元大学教授とローソンという若い作家が居座っていた。パーシーは2人と暮らし始める。


パーシーは、ロレーンがボビーに遺した歌がきっかけでニューオーリンズに戻り、この街で会う人ごとにロレーンにそっくりといわれてロレーンの話を聞かされる。だが、パーシーが自分からロレーンの人となりを他人から聞こうという姿勢はない。もはや赤の他人と思っていた母親がこれほどまでに人々に愛されていたことにヒロインが心を動かされないようでは、物語が進展しないではないか。結局、パーシーを身ごもったロレーンが彼女の父親を誰にも明かさず死んだが、実はボビーがパーシーの本当の父だったという陳腐な展開。どうせならパーシーがロレーンの人生をあぶりだす過程で真相にたどり着くというくらいのミステリー仕立てにしないと、日常生活の平凡なエピソードの積み重ねからは退屈しか感じない。


一応、かつては偉大な先生に見えたボビーがいまやくたびれた老人になってしまったことに苛立ちを感じるローソンという、師弟関係における男同士の微妙な感情のすれ違いや、文学作品上の名言をちりばめることで作品にアクセントをつけてはいる。それでも、肝心のパーシーにもう少し意思や行動力ないと、物語は魅力的にはならない。


↓メルマガ登録はこちらから↓