こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ロッキー・ザ・ファイナル

otello2007-04-20

ロッキー・ザ・ファイナル ROCKY BALBOA


ポイント ★★★★
DATE 07/4/14
THEATER TOHOシネマズ横浜
監督 シルベスター・スタローン
ナンバー 73
出演 バート・ヤング/アントニオ・ターバー/ジェラルディン・ヒューズ/トニー・バートン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


60歳にしてなお揺るぎない肉体への信仰、ロッキーに託した物語はもはや映画を超えたスタローンの生き方そのものだ。不器用だがまっすぐに己の信じる道を進むのみ。衰えを知らない熱い想いは大きなうねりとなってスクリーンからほとばしり、打たれても打たれても前に突き進む姿に映画中の試合会場の観客同様、思わず「ロッキー」コールを送ってしまう。夢を追うのに年齢は関係なく、不可能と思われることに挑戦する。人生を積極的に肯定する意思の力が最後まで貫かれる。


エイドリアンを亡くしたロッキーは息子とうまくいかず、レストラン経営に精を出しながらも人生にどこか物足りなさを感じていた。そんな時、現役のチャンピオン・ディクソンからエキジビジョンマッチの申し出を受け、もう一度自らに厳しいトレーニングを課す。


生卵一気飲み、牛肉サンドバッグ、片手腕立て伏せ、フィラデルフィア美術館へのロードワーク。新しい恋人もできたロッキーは、自分の原点を忠実になぞる。ボクシングのリアリティを超越した練習風景に懐かしさを覚え、アポロ戦を思わせる試合運びに手に汗握る。ストーリーはほとんど予想通りの展開だが、エイドリアンへの感傷と偉大な父を持った息子の気持ちを細やかに描いているところに好感が持てる。自分の戦いだけでなく、家族や友人を愛することもロッキーシリーズのテーマなのだ。


ロッキーが闘うのは、自分が何者かを証明するわけでもなく、家族や友のためでもなく、ましてカネやイデオロギーのためなどではない。ただただ自分の本能に従うのみ。それは、人生に成功を収めた上、守るべきものもなく、失うものもほとんどない人間だからこそできる挑戦だ。しかもそれは命がけの冒険。愚直なまでに自分の気持ちに素直になれる、それは人生における最高の贅沢だ。この映画は、もう十分に働いたシニア世代に対して、残りの人生は他人の目を気にせず思い切り自分らしく生きようという応援歌なのだ。


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