こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

リンガー

otello2007-04-26

リンガー THE RINGER

ポイント ★★
DATE 07/3/20
THEATER 20世紀FOX
監督 バリー・W・ブラウスタイン
ナンバー 55
出演 ジョニー・ノックスビル/ブライアン・コックス/キャサリン・ハイグル/ルイス・アヴァロス
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


精神にハンディキャップを持ちながら、それをものともせず純粋にスポーツに打ち込む障害者の姿は美しい。そういった健常者の思い込みを見事に打ち砕いてくれる。障害があっても人間である以上、いいやつもいればイヤなやつもいるし派閥もあればけんかもする。つい距離を置きがちな世界も一歩踏み込めば、普通の社会となんら変わりないことをこの作品は教えてくれる。ただ、主人公の障害者へのアプローチの仕方が不純なため、コメディなのに素直に笑えない。知的障害者のバカぶりを笑い飛ばすことができないのは心の壁がある証拠、というのが作者の主張なのは理解できるが、それほど上手に気持ちを切り替えることはなかなかできない。


スティーブは友人のケガ責任を感じ、治療費を負担しようとするがカネがない。そんな時、借金まみれの叔父・ゲイリーが、知的障害者のふりをしてスペシャル・オリンピックに参加しろとスティーブを唆す。スティーブは悪戦苦闘の末、予選を通過する。


肉体的にはハンディがないのだから、鍛えれば当然強くなる。障害者といえどもその競技レベルは高く、中にはプロとして大金を稼ぐアスリートもいる。また、スティーブがスタッフの女性に恋をすると、「彼をその気にさせた」と彼女が落ち込むシーンがある。障害者スポーツがカネまみれになっていることや、知的障害者と健常者の間には決して恋は生まれないという現実を物語に織り込み、「障害者の感動もの」とは一線を画すこの映画の姿勢は先進的だ。


それでも映画のノリについていけなかったのは、レースの途中で転んだ競走相手を他の走者が助け起こすシーンに象徴されるように知的障害者には善良な人が多いが、一方で憎しみを抱くほどの悪人がいないからだ。もし、悪意の塊のような障害者が登場すれば、そのときはきっと健常者と同じように笑い飛ばせるようになるだろう。


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