こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

スパイダーマン3

otello2007-05-01

スパイダーマン3 SPIDER-MAN 3


ポイント ★★*
DATE 07/5/1
THEATER TOHOYK
監督 サム・ライミ
ナンバー 85
出演 トビー・マグワイヤ/キルスティン・ダンスト/ジェームズ・フランコ/トーマス・ヘイデン・チャーチ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


スーパーヒーローとして街を守る仕事と、普通の人間としての生活を両立させることに成功する主人公は恋人との仲も順調。このまま彼を、父の仇と命を狙う元親友との戦闘モードに放り込むのかと思いきや、その前に自分の中の慢心と戦うことになるとは。しかし、その慢心の種はエイリアンという安易さ。バトルシーンは体験型アトラクションに乗っているようなめくるめくような爽快感があるが、悩める主人公が恋人のために迷いを吹っ切るという前作と同音異曲の展開では先が読めてしまう。


ピーターはMJの舞台を見に行った帰りにゴブリンとなったハリーに襲われるが辛勝。そんな時、隕石に乗ってやってきた液状生命体に憑りつかれ、黒い姿に変身する。一方、サンドマンとなった脱獄囚・マルコと復讐の鬼・ヴェノムとなった元同僚・エディーにも命を狙われ、一度は別れたMJを救うためにハリーに助力を請う。


この「3」も、ピーターがいかにして心の中の葛藤を克服して、巨大な力を持った正義の味方の使命を自覚するかを描く。エイリアンのおかげで肉体だけでなく負の感情まで増幅され、悪相になったピーターが欲望や虚栄心を満たしていく。その過程で、ちょい不良ぶったヘアスタイルや流し目・歪んだ口元が、彼の荒んだ心をすごく生き生きと表現する。自分を抑えて行儀よく生きるより、羽目をはずして楽しく生きる。ピーターのささやかな願いが、程度の低い俗物になるというのがあまりにも人間臭くて泣かせる。また、MJとのすれ違いやハリーとの友情などに多くの時間が割かれるというパターンも踏襲する。


結局、黒装束を捨て元に戻ったスパイダーマンは父の死の真相を知ったハリー=ゴブリンの加勢で、サンドマン、ヴェノムたちを倒す。「ハムナプトラ」と「T2」を足したような悪役の造形や、「バットマン フォーエバー」のようなタッグマッチという設定は、明らかなアイデアの枯渇。唯一の新しさがトビー・マグワイヤのダンスというのでは、このシリーズも次が苦しいだろう。


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