こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

イノセントワールド

otello2007-05-07

イノセントワールド 天下無賊


ポイント ★★★
DATE 07/2/20
THEATER 虎ノ門TOGEN
監督 フォン・シャオカン
ナンバー 35
出演 アンディ・ラウ/レネ・リウ/グォ・ヨウ/ワン・パオチャン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


人を疑うことを知らない無垢な心に触れたとき、詐欺師でも少しは心を動かすものなのか。正直という言葉の上にバカがつくような農村出身の青年はこの世に泥棒などいないと信じている。一方、彼が持つ大金を狙うプロのスリは、自分の生業に嫌気がさしている。ただひたすら善良なこの青年の姿はもはや菩薩の域に達し、スリを改心させる。その過程でカミソリやカッターの刃などはいうに及ばず、回転させるだけで卵の殻をむくなど、あらゆる小道具で他人の懐を狙うスリのテクニックが楽しめる。


ポーとリーは詐欺とスリを繰り返すカップル。ある日、2人は喧嘩をするがリーはシャーケンという青年に助けられ、彼の純粋な心にうたれる。そして大金を持って故郷に帰ろうとするシャーケンを狙うスリ集団から彼を守ろうとする。


長距離列車の中でシャーケンのかばんの中にある大金をめぐる攻防戦が繰り広げられるのだが、単独で挑む者、集団で襲う者、いずれも見事なトリックでシャーケンのカネは奪われる。しかしそのたびにポーが体を賭してスリ集団から奪い返す。その間もシャーケンは自分のカネが盗まれているなどとは夢にも思わない。やはりここはポーの言うとおり、世の中には悪い人間もたくさんいるということを彼に教えてやるほうが親切なのではないか。それでもシャーケンは人間の善を疑ったりしないだろうが。


やがて警察による大規模な捜査が入り、ポーとリー、スリ集団も一網打尽に捕らえられる。リーの妊娠を知ったポーは彼女だけは逃がそうとするが、そこにスリ集団の頭目が立ちはだかる。しかし、その大立ち回りのなかシャーケンは眠ったままで、その後も出てこない。せめて無事ふるさとにたどり着いたシャーケンがリーの下に現れて、おなかの子供の父親になることを告げるというくらいのオチを用意しないと、シャーケンの消息が不明のままではどこか消化不良が残ったままだ。


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