こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ドレスデン、運命の日

otello2007-05-09

ドレスデン、運命の日 DRESDEN


ポイント ★*
DATE 07/5/8
THEATER シャンテ
監督 ローランド・ズソ・リヒター
ナンバー 90
出演 フェリシタス・ヴォール/ジョン・ライト/ベンヤミン・サドラー/
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


彩度を落とした映像は戦争の記憶が色あせていくことへの抵抗なのか。第二次大戦で敗戦国となったドイツもまた、当然ながら被害者としての一面を持つ。空襲で多くの市民の命が奪われた古都で、国を裏切ろうとするドイツ人や敗戦間近なのに意外と物資が豊富だったことなど、ハリウッド映画では描かれなかった「ドイツ人の目で見た戦争」を描いている点は新鮮だ。しかし、そこで展開されるドラマはあまりにも幼稚な上、細かいカットの積み重ねというテレビの安っぽい手法を多用していると思ったら、案の定TVドラマだった。こんなもの映画館でカネを取って公開するな、と言いたい。


ドレスデンの病院で働く看護婦・アンナは同僚医師と恋人同士。ある日、撃墜された爆撃機に乗っていた英兵・ロバートが身分を隠して病院にしのび込む。アンナはけがをしているロバートを介護するうちに敵であることを忘れてしまう。


いくら母親がドイツ人でドイツ語が話せるといっても、これほど簡単に英兵がドイツ人の中に紛れ込むことができるだろうか。アンナにしても、自分たちの街を空襲に来た敵兵を匿うことこそ祖国への背信行為なのに、医療品を横流ししてスイスに脱出を図る父や婚約者を責められないだろう。しかも英兵と寝て、彼の子供まで腹に宿すのだ。いかにも戦時下で健気にかつまっすぐに生きる女性の生き方を描いているようなタッチなのに、その内容は「愛」に名を借りたバカ女の気まぐれに過ぎない。


やがてドレスデンは大空襲に見舞われ、街は炎に包まれる。その過程で英兵とアンナの婚約者が協力するなど物語は混沌を極め、もはや正視に堪えない。ただ、大戦中のドイツ国内のユダヤ人はすべて収容所送りになるのかと思っていたのだが、アーリア系の配偶者はその難を逃れることができるというのは初めて知った。


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