こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

眉山

otello2007-05-17

眉山

ポイント ★★
DATE 07/5/12
THEATER 109GM
監督 犬童一心
ナンバー 93
出演 松島菜々子/大沢たかお/宮本信子/
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


生涯にたった一人愛した男との間にできた子供を、その思い出の形見として大切に育てた母。そんな母の気持ちに反発を覚えている娘は母の命が残り少ないことを知って、実の父に会いに行こうとする。十分に愛されて育ったにもかかわらず、私生児という境遇を受け入れられなかった娘が、母の人生の最期にその真実を知るという展開は十分に涙を誘う素材。にもかかわらず、あまりにも身勝手なこの娘の行動にはまったくリアリティが感じられない。


キャリアウーマンの咲子は母・龍子が重病という知らせを聞いて故郷の徳島に帰る。そこで咲子は龍子が末期の悪性腫瘍で余命わずかと告知され、竜子が残した手がかりから父の存在を手繰る。そして龍子の人生は父という男を深く愛していたのに一緒になれない悲しい運命だったことを知る。


宮本信子扮する龍子の江戸っ子のような歯切れのよい啖呵が心地よい。間違っていることははっきりと口に出し指摘する。それには自分が正直な生き方をしていなければならないし、一見けんか腰に見えてもきちんと思いやっての言葉だから相手の心に届く。いまや絶滅危惧種のような説教おばさんなのだが、ここまでストレートだと一度起こられてみたい気持ちにさせられるほど爽快だった。


しかし、松島菜々子扮する咲子の行動は、母への屈折した思いを持っていることを差し引いてもあまりにも配慮に欠ける。龍子の遺言ともいえる私信を存命中に読んで父に会いに行くのはまだしも、なぜか小児科の医師・寺澤と仲良くなったり、挙句には阿波踊りの最中に父の姿を見つけると踊りの隊列にずかずか踏み込でいく始末。自分のやっていることが阿波踊りを冒涜しているだけでなく、両親の大切な思い出まで汚していることに気付かないのだろうか。そしてしまいには寺澤と結婚してしまうのだ。たとえ悲しい過去を持っていてもしっかりと根を張ったような生き方をしてきた龍子に対し、咲子の考えの軽さばかりが目立つ。咲子もまた、寺澤に家庭がありながら全力で彼を愛する道を選ぶ、というくらいのオチがついていれば別なのだが。。。


↓メルマガ登録はこちらから↓