こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

コマンダンテ

otello2007-05-31

コマンダンテ COMANDANTE


ポイント ★★★
DATE 07/2/27
THEATER メディアボックス
監督 オリバー・ストーン
ナンバー 39
出演 フィデル・カストロ/オリバー・ストーン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


史上唯一失敗しなかった社会主義国の独裁者として40年以上もキューバに君臨し続けるフィデル・カストロ。老いたりとはいえ、その足取りはなおしっかりと大地を踏みしめ、その言葉は明瞭に自己の信念を語る。ケネディニクソン、フルシチョフといった米ソ超大国のライバルはもはやこの世になく、イデオロギーの時代の数少ない生き残りとして今なお革命の精神は微塵も衰えていない。彼の精力的かつ繊細な人柄にオリバー・ストーンは時に大胆に、時に鋭く突っ込む。しかし、普通なら立腹するような質問にも悠然と構え、軽く受け流す様は伝説の人物にふさわしい風格だ。


2002年2月、オリバー・ストーンキューバに飛びカストロに単独インタビューを行う。バチスタ政権とのゲリラ戦、米ソを第三次世界大戦寸前にまで追い込んだキューバ危機、ベトナム戦争、そして盟友チェ・ゲバラとの友情と袂を分かつまでの秘話など、歴史の生き証人として自らの体験を語る。


もちろんカストロの思い出語りに登場する歴史上の人物は皆鬼籍に入り、生存者はカストロひとり。そこにどんな創作があっても反証を挙げるものは誰もいない。果たして彼が語ったキューバ危機やゲバラとの葛藤は真実なのかという答えはカストロのみぞ知る。しかし、そこでは革命に命を捧げ、生き抜いたものだけが持つ強靭な精神力と体に漲るエネルギーが発散し、強烈なパワーとなって些細な疑いをねじ伏せる。


一方でナイキの靴を愛用し、「グラディエーター」や「タイタニック」も見たという、米国文化への理解も示す。またローマ法王を招いたりと、決してガチガチのコミュニストというわけではなく、開放できる部分は開放し、国民生活を豊かにすることに余念はない。特に印象に残るのは移動のとき。決して広くはないベンツの後部座席にカストロオリバー・ストーン、通訳と3人で重なるようにして乗り込むのだ。窮屈さにも不快な顔ひとつせず、一国の指導者でありながら自分に対する贅沢をこれほどまでに戒める。カストロ社会主義を敵視する国からも一定の尊敬を集めている理由がよくわかる。北朝鮮のアホに少し見習わせたいものだ。。。


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