こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ラストラブ

otello2007-06-15

ラストラブ


ポイント ★*
DATE 07/4/23
THEATER 松竹
監督 藤田明二
ナンバー 81
出演 田村正和/伊東美咲/森迫永依/片岡鶴太郎
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


いまや絶滅したトレンディドラマでもここまでベタな設定はなかっただろう。不自然な出会いと再会、さらに考えられない場面での再再会、そして主人公の病。リアリティをまったく感じさせない物語と素人が頭の中で考えたようなご都合主義のエピソードの連発で、涙を誘おうという演出はもはやため息しか出ない。もしかして、まじめなラブストーリーを装ったコメディなのかも知れないが、この映画からもれるのは失笑の類。こんな脚本を衒いもなく映像化したことに感心する。


元サックス奏者・阿川は、ある日、ゴミ出しマナーを県庁職員の結に咎められる。その日のうちに阿川と結はNY行きの機内で再会、さらにブルックリンの公園でも偶然に再会。その夜、結が婚約を破棄されたことから2人は急接近する。


何の接点もなかった男女が一日のうちに何度も顔をあわせる上、宿泊ホテルまで同じというバカバカしさ。さらに阿川は結の部屋のドアを簡単に押し開けてしまう。これはセキュリティ問題アリだろう。そんなことはお構いなしに2人はお互いのことを語り合い、日本に帰った後も結が通い始めたピアノ教室で阿川の娘と知り合い、ケガをした娘を家に送ってまたまた再会するのだ。ここまで何も考えずに偶然を積み重ねる脚本に、今後はどんなばかげた展開が待っているのかむしろ期待してしまう。


その後も、ジャズに復帰した阿川が胃がんで余命3ヶ月とか、結を想う同僚に阿川が意味不明の説教をしたりと、ベタのてんこ盛り。くだらない主人公をまじめに演じている田村正和は、滑稽を通り越してかえって立派に見えてくるから不思議だ。ある意味、最初から最後まで矛盾点を満載したこの作品には希少価値さえ覚える。スクリーンを見ながら「こんなアホなことあるわけないやろ!」といちいち突っ込みを入れるという、新しい映画の楽しみ方を提供してくれた。


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