こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ゾディアック

otello2007-06-20

ゾディアック ZODIAC

ポイント ★★*
DATE 07/6/16
THEATER TOHOYK
監督 デビッド・フィンチャー
ナンバー 117
出演 ジェイク・ギレンホール/ロバート・ダウニーJr/マーク・ラファロ/アンソニー・エドワーズ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


連続殺人、暗号による犯行声明、現場に残されたわずかな手がかり。世間を震撼させたその事件は、被害者だけでなく、暗号にとり付かれたイラストレーターの人生を変えていく。発生現場の管轄の違いから捜査の連携が取れない警察に対して、遠く離れた警察署を回って丹念に調査する主人公の姿は、物事の細かいところに気をつける一方で、大所高所からの視点が必要なことを物語る。ただ、映画独自の解釈を加えず観客を迷宮に放り出すのは、いくら事実を基にしているといっても無責任ではないか。


殺人を犯し、事件を通報した上、新聞社に手紙を送り、自分の犯行を報道させる犯人。さらに警察をあざ笑うかのように殺人は続き、ゾディアックと名乗る犯人は犯行をエスカレートさせていく。ゾディアックからの暗号声明文を見たイラストレーターのロバートは次第に事件にのめりこんでいく。


自己顕示欲が強い犯人によるマスコミを巻き込んだ「劇場型犯罪」のはしりなのだろう、新聞もテレビもゾディアックの要求どおり記事を作り番組を制作することで商売に結び付けようとする。ゾディアックは世間の注目の元での更なる犯行で、自分の能力の高さを誇示しようとする。おそらく'69年ごろには例を見なかったタイプの犯罪なのだろうが、現在ではでは手垢がついてしまっているような手口をどうして今頃映画化しようとしたのか。映画化するにあたって事件を解決するような新事実が発見されたというのなら別だが、物語からは普遍的な価値観は見出せない。


結局、状況証拠は山ほどあってつじつまは一致するのに、物的証拠は何もなく、犯人の目星がついているにもかかわらず警察は手出しができない。ロバートは犯人と確信した男の所在も突き止める。しかし、決定的な証拠は出せないうちに男は死に、真相は藪の中。この事件を記憶に留めている米国人ならば何らかの思い入れもあるだろうが、その当時のことをを知ず見ても何の感慨も沸かなかった。まあ、この犯人が「ダーティハリー」のスコーピオのモデルだったことだけはトリビア心を刺激されたが。。。


↓メルマガ登録はこちらから↓