こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ダイ・ハード4.0

otello2007-06-30

ダイ・ハード4.0 DIE HARD 4.0

ポイント ★★*
DATE 07/6/23
THEATER 109GM
監督 レン・ワイズマン
ナンバー 122
出演 ブルース・ウィリス/ジャスティン・ロング/ティモシー・オリファント/マギーQ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


2度も命がけで助けた妻とは離婚し、娘にも絶縁を宣言される孤独な男。悪党を叩き潰すためにすべてを犠牲にしてきた英雄の寂しい現実がリアルな台詞で描かれる。それでも、目の前に悪党が現れると後先を顧みずに危険に身を投じる。平和を守るために正義を執行するという刑事の業が染み付いた主人公、今回もあらゆるピンチをくぐりぬけ傷だらけになりながらも勝利する。しかし、これまでのシリーズと違い、犯行の計画性だけでなく、アクションを見せるための強引な設定にも無理があった。


政府機関の中枢をなすコンピューターを狙ったサイバーテロが発生、全米の通信やインフラがパニック状態になる。偶然、ファレルというハッカーを保護したマクレーンは彼の協力を得てテロリストの所在を探す。


ビル、空港、ニューヨーク、そして今度は米国東部、舞台が広がるにつれて物語も希釈されていく。NY、ワシントン、内陸部と相当な距離を自動車を運転しながら移動しているにもかかわらず、マクレーンは疲れ知らず。その間、当然襲いかかる敵との戦闘で肉体的ダメージも相当なはず。ファレルに、誰もやらないから自分がやるという「英雄の定義」を講釈してからは、マクレーンから人間的な弱さは消え、超人に変身してしまう。崩落する高架道路からジェット戦闘機の尾翼に飛び移り、さらにそこから飛び降りて生還するなどというマンガチックなシーンがそれを象徴する。


また、犯人側がハッカーを派手に殺す必要はないし、女殺し屋との格闘シーンでもなぜかトラックをエレベーターシャフトに落としたりする。このあたりまったく無駄で、映画を派手に彩るために無理やり作られたとしか思えなかった。張り巡らされた伏線と主人公の人間くささ、それがこのシリーズの魅力だったはずなのに、この新作はより大量の火薬とノンストップアクションで観客を思考停止に追い込み、細かい齟齬はサイバー用語でごまかす。ブルース・ウィリスも「ロッキー」のように初心に戻るべきだった。


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