こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

そして、デブノーの森へ

otello2007-07-03

そして、デブノーの森へ LE PRIX DU DESIR


ポイント ★★
DATE 07/4/20
THEATER シネカノン試写室
監督 ロベルト・アンドゥ
ナンバー 78
出演 ダニエル・オートゥイユ/アナ・グラリス/グレタ・スカッキ/ミシェル・ロンズデール
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


謎の女、隠された過去、偽りの人生・・・。手の込んだ復讐劇にミステリーと官能を加えた盛りだくさんな内容にしようという意気込みは理解できるが、どの要素も中途半端で消化不良の感は否めない。映像や効果音も70年代風の古臭さが漂い、手垢のついた2時間ドラマのようなスタイル。脅迫状や密会現場の隠し撮り写真といった手段で取引する様子は今という時代がまったく描きこまれておらず、嘘を封印した男の苦悩や悔恨とも無縁だ。結局、モデル上がりのヒロインが見せる美しい裸体だけしか印象に残らない。


人気作家であることを隠して生きてきたダニエルは、義息の結婚式に向かう途中美しい女と出会い一夜を共にする。翌日、現れた花嫁は昨夜の女。ミラと名乗るその女とダニエルは深い関係に墜ちていくが、ある日、2人が愛し合う瞬間を撮った写真がダニエルの元に送られてくる。


500万スイスフランと、ダニエルは自殺した親友・ポールの作品を自作として発表したことを世間に公表する、というのが脅迫の言い分なのだが、そこに至るまでの過程が不自然だ。ミラが破滅させる相手はダニエルのはずなのに、彼の義息と結婚し、不倫関係を築くという遠大な計画。そのために身分を偽り、故郷を捨て、憎むべき相手と寝るなどというのは大げさすぎる。そもそもミラがどうしてダニエルの不正を知ったのか、また自分が生まれる前に自殺した父親の恨みを晴らそうとなど思うものなのか。そのあたりのミラの動機や感情がほとんど描かれておらず、作品は思いつきのアイデアの羅列のような迷宮をさまよう。


ダニエルもミラも自分の身分を偽って生きてきたという秘密を持っている。その秘密をお互いが暴露しあうとき、物語は大いなる終息に向かう。しかし、どうせならダニエルはポールの知らないうちにミラの母親も寝取っていて、ダニエルこそミラの本当の(遺伝上の)父親だったというくらいのベタなオチくらいつけてほしかった。


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