こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

シュレック3

otello2007-07-08

シュレック3 SHREK THE THIRD

ポイント ★*
DATE 07/7/5
THEATER 池袋東急
監督 クリス・ミラー
ナンバー 132
出演
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


容貌で人間の価値が判断されるという現実を真正面から受け止め、醜い外見の主人公が奮闘する前2作に対し、この3作目は容姿に対する偏見がかなり少なくなってる。それなりに容姿のつりあった者同士がお互いの分を知った上で結ばれて、それなりに幸せになってしまえば、もう美しい外見に対する憧れはなくなり、今度はその暮らしを守ろうとするようになる。冒険よりも安定、支配者になるより気ままな生活。一応、巻き込まれるかたちで妻を救うために立ち上がるが、無理やりな設定で、細密なCGも話題作をパロディにしたような大げさなアクションもインパクトに欠ける。


宮殿で幸せに暮らしていたシュレックとフィオナだったが、王が死に際に王位継承権を持つ第3の青年・アーサーの存在を明かし、王族として窮屈な暮らしに退屈していたシュレックはアーサーを探す旅に出る。その間に玉座を狙うチャーミング王子が悪人を組織して王国を乗っ取る。


おとぎ話の悪人たちにもう一度活躍するチャンスを与えようという試みは面白い。悪が悪として分かりやすく存在した時代に書かれた昔話、憎まれ役として登場するキャラクターは本当にそんなに悪いヤツだったのだろうかという疑問は、善悪の境界が曖昧になり価値観が相対的になった現代においては大いに研究されるべきテーマだ。チャーミング王子はそんな彼らの不遇をかこつ気持ちに取り入り軍団を組織するのだが、もう少し悪人たちの心情を代弁するようなシーンを用意して欲しかった。


フィオナたちは人質となって屋根裏部屋に監禁されるが、この危機も強引な手段で切り抜けるし、戻ってきたシュレック一行がチャーミング王子らに拉致された後、彼らに反撃し勝利を収める展開にもまったく工夫がない。しかも、最後はアーサーの説教くさい演説で悪人たちが剣を捨てる始末。作品から「CGアニメの可能性を広げるような何か新しいことをしよう」という意気込みがまったく感じられなかった。

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