こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

マルチェロ・マストロヤンニ 甘い追憶

otello2007-07-12

マルチェロ・マストロヤンニ 甘い追憶 UNA VITA DOLCE


ポイント ★★
DATE 07/4/6
THEATER メディア・ボックス
監督 マリオ・カレーナ/アンナローザ・モッリ
ナンバー 67
出演
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


イタリア映画界伝説の大スターの人生を、生前残された彼のフィルムと彼を知る映画監督、俳優といった映画関係者の証言で綴る。しかし、カメラの前では決して否定的なニュアンスの思い出は披露されず、スターのイメージを壊すようなことは一切語られない。また、一貫したテーマがないために、膨大な資料映像と生存者へのインタビューを敢行したにもかかわらず、主人公の具体的な人物像が見えてこない。誰に聞いてもいいことばかりでは当然飽きてくる。なぜもっと毀誉褒貶を抉り出そうとしないのだろうか。


'96年に逝去したマルチェロ・マストロヤンニは生涯に150本もの映画に出演、フェリーニビスコンティといった巨匠と出会って世界的な名声を得る。また、カトリーヌ・ドヌーヴソフィア・ローレンといった共演者にも恵まれ、数々の名作を世に残す。


「彼はセリフ覚えの天才」とか「どんな服を着ても似合ったが、特に白がすばらしい」とかいったヨイショ話に終始する。唯一、彼の神経質な部分が伝わってくるのは「電話魔」のエピソード。撮影中もワンシーン撮り終わると電話をかけにいき、ついにフェリーニがマストロヤンニのために撮影所内に電話ボックスを作らせたという。それすら、誰に電話をかけ、どういう内容を彼が話したかということまでは分からない。また、映画の主人公を演じる上で役作りの苦労話や、撮影秘話といった、いまどきのDVDなら特典映像として入っているようなおまけもない。


マルチェロ本人が死んで10年以上立っている上、生前、特に若いころの彼を知る関係者もほとんどが鬼籍に入っていては、なかなか面白いエピソードを拾えないことは分かる。インタビューを受けた者も死者の悪口までは言わないだろう。それでも、「今だから言えるあの事件の真相」のような、この作品が初めて暴くスクープのような新事実が示されないと、わざわざ伝記本まで出ている人物の伝記映画を作る意味はないだろう。


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