こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

不完全なふたり

otello2007-07-16

不完全なふたり UN COUPLE PARFAIT


ポイント ★*
DATE 07/3/13
THEATER 映画美学校
監督 諏訪敦彦
ナンバー 49
出演 ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ/ブリュノ・トデスキーニ/ナタリー・ブトゥフ/アレックス・デスカス
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


何かが起こりそうな予感を漂わせた寡黙な映像が、退屈で浅薄な展開に奥行きを持たせている。しかし、会話だけで進行する物語はいかにも散漫で、そこからは夫婦の亀裂の原因は漏れてこない。長年連れ添った夫婦の間に何があったのか、何がなかったのか。2人は決して過去のエピソードを語らないが、おそらく小さな不満が積もり積もって、気がついたら後戻りできないところに来ていたのだろう。それでも、もう少し観客に2人の状況を分からせるエピソードやセリフなどをちりばめなければ伝わらない。想像力にも限界があるのだから。


マリーとニコラは友人の結婚式に出席するためにパリに来るが、ホテルのベッドは別。2人は離婚することを決めていて、これが最後の夫婦旅行。よそよそしい空気の中で必至に関係を保とうとする。


精神的に安定しないマリーの口から出る容赦ない言葉がニコラを傷つける。それが女のヒステリーと解釈しているのか、ニコラはじっと我慢している。もはや喧嘩する気力すらなくなった夫婦の姿がとてもリアル。愛が残っていれば反発もするが、もう相手にどう思われてもかまわないという諦観が映画をさめざめとした空気で覆う。だが、そこにも劇的な要素はまったくなく、ただ思いついた言葉を並べているだけだ。


結局、作者は何を伝えたかったのだろう。離婚を決めた夫婦の最後の旅。修復しようという努力もなく、2人とも相手が復縁を口にするのを待っているかのよう。そして、出発直前の熱いキスとラストシーンのマリーのうれしそうな笑い声。そこには小手先の策を弄して安っぽいシノプシスをアート作品に見せようという姑息な発想が透けて見える。彼らはやり直すことができるのか、その結論を明らかにせず観客に判断をゆだねるというのは、この映画の場合は貧困な脚本を装飾しているに過ぎず、余韻にひたるまでもなくそのメッキははがれている。


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