こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

イタリア的、恋愛マニュアル

otello2007-07-19

イタリア的、恋愛マニュアル


ポイント ★★★
DATE 07/7/15
THEATER チネチッタ
監督 ジョヴァンニ・ヴェロネージ
ナンバー 140
出演 シルヴィオ・ムッチーノ/ジャスミン・トリンカ/マルゲリータ・プイ/ディーノ・アッブレーシャ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


熱烈な思いで始まった恋も時と共にやがてその熱は冷める。そのときふたりははどうするのか。倦怠期を我慢して過ごすのか、新しい刺激を加えることで愛を再起動するのか、やはり一度ヒビ割れた関係は元には戻らず新たな恋を探すのか。映画は、めでたく結ばれた若いカップルが将来たどるであろう愛の運命をオムニバスで見せる。そどんな道を辿ろうとも、男も女も恋することに積極的な気持ちを失わないうちは、その先に必ず幸せが待ち受けているという恋愛至上主義。恋は人生を彩るスパイスではなく、人生そのものだ。


第1話は街で偶然であった娘に一目ぼれした若者が熱烈なアタックを開始する。第2話はお互いにうんざりしている中年夫婦がついにある決心をする。第3話は婦人警官が夫の浮気を知り嫉妬に狂う。第4話は妻に逃げられた小児科医が恋愛マニュアルに頼って過去を吹っ切ろうとする。


強引な方法で恋を成就させようとする第1話は、あまりにも手垢の付いた展開。ストーカーまがいに付きまとい、何とか彼女と結婚するのだが、新鮮味がまったくない上にうざいほどの独白がさらに水を差す。しかし、その第1話がそれぞれ中年男女が主人公になっている第2〜4話の伏線になっているという計算された構成だ。若いふたりは、この中のどれかひとつではなく、倦怠期・浮気・離婚と、すべてを経験するのかも知れない。


特に、夫の浮気現場を目撃した婦人警官が駐車違反取締りに大活躍する第3話がコメディとしていちばん洗練されている。制服のまま嫉妬もあらわに当り散らす。夫にだけでなく容赦ない取締りと職権濫用で世間全体に復讐するかのような態度と、憧れのニュースキャスターの前では借りてきた猫のようにしおらしくなるあたり、警官といえども感情的な女に過ぎないことをリアルに感じさせてくれる。いずれにせよ、ひとりの相手に対する愛は永遠ではないが、誰かに恋する気持ちは死ぬまで持ち続ける。それがイタリア的恋愛の秘訣、いや人生を楽しむ極意であることをイタリア人は教えてくれる。


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