こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団

otello2007-07-20

ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団
HARRY POTTER AND THE ORDER OF PHOENIX


ポイント ★★★
DATE 07/7/14
THEATER TOHOYK
監督 デイビッド・イェーツ
ナンバー 139
出演 ダニエル・ラドクリフ/イメルダ・スタウントン/ゲイリー・オールドマン/マイケル・ガンボン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


何度も死の危険を乗り越えてきたハリーにはもはや少年の面影は微塵もなく、学んだばかりの魔法で友人たちと無邪気に戯れていたのが遠い昔のよう。長い髪を刈り上げすっかり精悍になったハリーが時折見せる老成した表情に、彼の人生が苦難に満ちたものであることが偲ばれる。今回は迫り来る危機と、その危機を見て見ぬフリをする魔法省とも戦わなければならない。ハリーばかりではなくホグワーツ全体が管理体制におかれて、学園生活自体が尾崎豊が歌ったような窮屈さ。結果として、シリーズ中いちばん暗く潤いのない作品となってしまった。


ハリーはヴォルデモートが復活したことを魔法界に知らせようとするが魔法省はウソと断罪、ホグワーツにアンブリッジという女性教師を送り込む。アンブリッジは学園の風紀を引き締める中、ハリーは密かにダンブルドア軍団を組織し、仲間に闇の魔術と戦う訓練を施す。


魔法大臣のお墨付きの下、穏やかな笑顔を絶やさず冷酷な命令を次々と下すアンブリッジ。生徒の自由は著しく制限され、授業からは楽しさが消える。反抗的な生徒は罰せられ、無能な教師はクビにされる。イメルダ・スタウントン扮するおばさん教師が放つ強烈な個性の前で他の登場人物は完全に出番を奪われ、ハリーですら影が薄い。このあたり、圧倒的な映像の情報量と登場人物の多さに、原作を読んでいないと話の展開が速すぎて理解できないだろう。原作のエッセンスを残しつつもエピソードの取捨選択をしないと、映画としては成り立たないことを脚本家は肝に銘じるべきだ。


旗幟鮮明の者、面従腹背の者、優柔不断な者、かつてはヒーローだった大人たちも成長したハリーの目から見れば物足りない。登場人物があまりにも人間くさくなってしまい、物語は混沌さを増す中で1年が駆け足で過ぎていく。戦いが日常と化し、友人知人の死がありふれたものとなってしまった学園生活があと2年も残るハリーに、何か心休まる時間を用意してあげないと、見ているほうも疲れてしまう。。。


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