こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ファウンテン 永遠につづく愛

otello2007-07-24

ファウンテン 永遠につづく愛 THE FOUNTAIN


ポイント ★★
DATE 07/7/17
THEATER 銀座テアトルシネマ
監督 ダーレン・アロノフスキー
ナンバー 141
出演 ヒュー・ジャックマン/レイチェル・ワイズ/エレン・バーンステイン/
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


永遠の命とアンチエイジング、愛する者の体が徐々に病魔に蝕まれ余命わずかと知ったとき、人は誰もがそれを願う。研究者である主人公はいかにして妻を生きながらえさせるかを追及するうちに、16世紀のマヤ遺跡と未知の精神世界に迷い込む。それが暗示するのは過去と未来。滅びた文明の中で生命の起源を探す一方、光に満ちた宇宙のかなたでスキンヘッドの男が座禅を組むというシュールな映像は、マヤの呪術と東洋の哲学という、西洋の理性や科学に相対する価値観への憧憬と劣等感のあらわれだ。


医師のトミーは、妻・イジーの脳腫瘍が末期的なのを知り治療薬の研究に没頭する。イジーはそんなトミーに自分の書いた小説を手渡し、最終章を書き上げろという。それはスペイン女王の命を受けた冒険家が、古代マヤ遺跡の生命の木を探し求めるというものだった。


透明な球体の中のトミーが見るヴィジョンは、魂の行き着く先のよう。そこではもはや肉体に意味はなく、肉体から開放された精神だけが自由を手に入れる。つまり、死を受け入れて初めて永遠の存在となるということか。ここまでくると生死観という哲学を映像化したというより、どう見ても新興宗教が唱える安っぽい来世にしか見えない。


命には限りがあるからこそ生きている間の一瞬一瞬を大切にしようとする。そのことは過去の登場人物も現在の登場人物も知っているはず。だからこそ現在のトミーはイジーの死を受け止め、彼女の遺言を実行しようとする。それはイジーの書いた物語の結末と、不老不死の新薬を開発することなのか。しかし、本当に命が永遠のものになってしまったら人生は味気ないものになり、それこそ人は死を願うようになるだろう。生きているからこそ味わう悲しみより、死なないことの地獄。球体の中のトミーは、新薬で死ねずに生きながらえてきたゆえに、心の平安を得るより煩悩に押しつぶされそうになる哀れな人間に見えた。。。


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