こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

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otello2007-07-29

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ポイント ★★*
DATE 07/7/23
THEATER シネマライズ
監督 ルーシー・ウォーカー
ナンバー 145
出演 サブリエ・テンバーゲン/ポール・クローネンバーグ//
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


罪人、役立たず、前世の因縁。盲目のハンディを背負うだけでなく、差別とも闘わなければならない。チベットにおいて、目が見えないということは生きていること自体が許されない存在。信仰篤い人々は迷信深く、偏見も依然として強い。そんな土地に盲学校を作った盲目のドイツ人女性が、自分の教え子をヒマラヤ登山に挑戦させる。子供たちが白い杖を頼りに一歩一歩険しい山道を登っていく足取りは弱弱しいが、仲間たちと同じ目的に向かって努力する過程で自信を取り戻し、将来の夢や目標を語れるまでに成長する姿は力強い。


チベットのラサで盲学校を主宰するサブリエは、盲目の米国人クライマー・エリックを招聘し、自身が主催する盲学校の生徒たちとともにエベレストの隣にあるラクパリという峰を目指す。一行はエベレスト登頂のベースキャンプまで無事たどり着くが、子供たちの中で体調不良を訴えるものが続出する。


大空に突き出した山の頂から見る景色。おそらくそれは真っ青な空と白く雪化粧したヒマラヤの峰々に違いない。盲人たちにはそれは見えない。だが、風の音を聞き、空気の流れを感じることで、心の中にその風景を再現する。目が見えないからこそ想像力が働くという盲人の言葉に、色や形を超越した睛眼者の理解を超えたイメージの世界があることを教えられる。


本来の主人公は子供たちのはず。しかし、ここではやはり欧米人の考え方が幅を利かせ、何のために登るのかという根本的な命題も白人の大人たちだけで決定され、チベットの子供たちが入り込む余地はない。ベースキャンプで3人の子供たちが高山病にかかった時、元気な子供だけでも頂上アタックさせるか、それとも全員撤退するかの議論になる。そこで子供たちの意見を聞こうという発想は白人にはない。このあたりがいかにも価値観の押し付けで、白人の優越感がにじみ出る。そしてたどり着いたのは、山を征服するよりも友情を学ぶという教育的な結論。盲目の子供たちに「自分の意見をはっきり言う」ということもきちんと教えて欲しかった。


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