こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

レミーのおいしいレストラン

otello2007-07-30

レミーのおいしいレストラン RATATOUILLE


ポイント ★★*
DATE 07/7/27
THEATER WMKH
監督 ブラッド・バード
ナンバー 150
出演
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


遠いところから船に乗ってやってきて、人目を忍ぶようにして暮らし、それでも成功への夢は捨てていない。これはまさしくフランス社会に蔓延するアフリカからの密入国者そのもの。不法就労者をネズミに擬することでパリという大都会が抱える人種や外国人労働者の問題を鋭く切り取る一方、彼らにも手に職をつけて社会に必要とされれば必ず受け入れられるという希望も持たせている。しかし、この不衛生のシンボルのような動物の群れがキッチンの床や貯蔵庫の棚を駆け回るシーンにはものすごく違和感を感じる。


群れからはぐれたネズミのレミーは高級レストランの厨房に忍び込み、リングイニという見習いコックと知り合う。味覚と嗅覚に優れたレミーはリングイニのために料理を作り、やがてそれがレストランの評判メニューになる。


誰にでも料理はできるという名シェフの言葉は、料理人に人種や性別は関係ないこと宣言している。実際は、リングイニの教育係・コレットが言うように料理界は保守的な男社会で、その壁を乗り越えるには相当な覚悟と努力が必要。まして、ネズミ=黒人不法就労者ならば受ける差別は想像以上だろう。しかし、リングイニは外見よりも彼の才能を認め素直に教えを請う。レミー自身、表に出ないようにしているが、理解者に恵まれてその才能を発揮することに喜びを感じるようになる。


やがてネズミが厨房にいることがばれてレストランはつぶれるが、これも不法労働者を雇用していたことで移民局から摘発を受けたと解釈すべきだろう。結局、リングイニは厨房をすべてネズミに任せたビストロを新たにオープンし、その味で繁盛させる。接客係など客の目に付くところは白人のフランス人を使うが、コックはすべてネズミ=外国人。優秀な料理人を低賃金で雇い経営コストを下げるという、まさしく外国人労働者搾取の構図。コックとしての才能に恵まれないが、リングイニは経営者としてはとても有能で、レストラン乗っ取りを図る料理長よりよほど腹黒かった。子供向けアニメを装って不法就労の現実を描くとは、なかなか奥が深い。。。


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