こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ボーン・アルティメイタム

otello2007-11-14

ボーン・アルティメイタム THE BOURNE ULTIMATUM


ポイント ★★★★
DATE 07/11/10
THEATER 109GM
監督 ポール・グリーングラス
ナンバー 228
出演 マット・デイモン/ジュリア・スタイルズ/パディ・コンシダイン/エドガー・ラミレス
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


手持ちカメラがもたらす圧倒的な臨場感と短いカットをつなぎ合わせる張り詰めた緊張感。追う者と追われる者、その立場はめまぐるしく転変し、時にぶれ時に横に流れるカメラワークは命がけのゲームに身を置いているかのようなリアリティ。一瞬たりともスクリーンから目を離せない映像をたたみかめるように展開させる手法は息が詰まりそうになる。殺人マシーンとして人間の心を封印した男が、記憶喪失になることで再び人間の心を取り戻す。強靭な肉体と的確な判断力を備えた主人公が、愛や憎悪そして後悔に胸を痛める姿が切なさを誘う。


CIAの極秘暗殺部隊計画を新聞で知ったボーンは、その記事を書いた記者に接触するが、記者は殺される。さらに調査を進めると、その計画はかつてボーンが所属した組織をバージョンアップしたものだった。


駅構内での監視と包囲網は雑踏という不特定多数の人間が行きかう空間の匿名性を見事に生かし、タンジールの住宅街での追跡は迷路のような街並みと建物の高さを最大限利用する。さらにニューヨークでのだましあいとカーチェイス、映画はその3か所でのアクションを見せ場にして、ボーンの記憶と情報の断片をつなぎ合わせるという構成。ボーンは動物的な本能で敵を見つけ撃退するが、ほとんど銃を使わず実戦向けに洗練された格闘術で相手を倒す。痛みが感じられるような暴力の描写がこの作品ではさらに進化している。


やがてボーンは殺人マシーンだったころの記憶よりそれ以前の良心を取り戻し、自分を暗殺者に仕立て上げた組織の責任者に迫る。それは自分の苦悩をより深める結果にしかならないと分かっていても、ボーンは真実を求める。自分が何者か知り、自分の犯した罪に正面から立ち向かう。その決意を実践させる予感を持たせ、ボーンの人生に光明が差し込むラストシーンが心地よかった。それにしてもエンドロールに流れる主題歌はセンスが悪すぎだ。。。


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