こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ファンタスティック!チェコアニメ映画祭

otello2007-11-23

ファンタスティック!チェコアニメ映画祭


ポイント ★★*
DATE 07/9/27
THEATER 映画美学校
監督
ナンバー 194
出演
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


60年代から80年代にかけて、チェコがまだ自由を手にしていなかったころに作られた短編アニメの数々。共産党の支配下にあった時代に作られたもの、プラハの春を謳歌していたころに作られたもの、その反動の抑圧的な時代に作られたもの、共産党の箍が緩み始め再び自由の息吹の萌芽を感じさせるもの、それぞれの製作年度とチェコの政治史を踏まえながら見ると、その作品を作ったクリエーターたちの意図が見えてくる。もちろん、彼らの中にも体制派・反体制派が混在していただろう。しかし、自分のアイデアを描いても検閲のあった時代、彼らが政治の介入をかわしながら表現の自由を守ろうとしたことを信じたい。


「真夜中の大冒険」は積み木の機関車が、最新式の模型機関車に夢中になる駅長に嫉妬する姿がとても愛らしく、古くなったオモチャのさみしい運命はピクサーの「トイ・ストーリー」が引き継いでいる。「ブラックアンドホワイト」は白い羊の群れと黒い羊の群れを通じて、体制に異を唱える勇気、そしてそれが正しい主張ならばきっと支持されるということの比喩だろうか。


「理想」は自動車を持つことが夢だった男の妻子にまで節約を押し付ける姿を通じて、人生に大切なものは何なのかを考えさせる。「運命の力」は手相を見てもらった男が占い師が語る波乱万丈の未来を笑い飛ばすが、実は見てもらった手は義手だったというオチ。政府のプロパガンダを信じるより未来は自分で切り開けということだろう。家庭では妻子に、会社では上司にいびられるサラリーマンが空想の中で美女に囲まれる生活を送るという「妄想癖」は、どんな体制も人の心の中までは支配できないという分かりやすいメタファーだ。


すべてが手作りのアニメは素朴な味わいがあるが、CGによって表現技術は比較にならないほど進歩した。しかし、自由が制限されていた時代に作られたからこそ、その映像の裏に隠されたメッセージを読み取るというクリエイティブな楽しみが残されている。


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