こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ナンバー23

otello2007-11-29

ナンバー23 THE NUMBER 23

ポイント ★*
DATE 07/11/24
THEATER 109KH
監督 ジョエル・シューマッカー
ナンバー 240
出演 ジム・キャリー/ヴァージニア・マドセン/ローガン・ラーマン/ダニー・ヒューストン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


偶然なのか必然なのか。古本屋で見つけた無名の小説に書かれていることが自分の人生にそっくりだとしたら、その本との出合い自体を運命と感じてしまう。そして突然身の回りに出現する数字。正気と狂気の間で事実の細い糸を紡いでいくうちに、改ざんされた過去と恐るべき真実に行き当たる。しかし、謎解きの鍵が失われた記憶にあったなどという安易なオチはあまりにも陳腐で辟易する。主人公の感じる違和感を共有する観客にとって、これほどしらける結末はない。


動物管理官のウォルターは妻のアガタが買った「ナンバー23」という本に夢中になる。そこには自分とそっくりの境遇の男が殺人を犯し破滅していく姿が描かれ、いつしかウォルターは小説中の主人公に共感しその行動に共鳴していく。


「23」という数字にウォルターは憑りつかれるが、不吉な意味はこじつけであることは一目瞭然。他の登場人物もウォルターをたしなめる。つまり、霊的な感覚はウォルターだけのものであり、映画自体はオカルト的な志向ではない。しかし、ウォルターの主観と客観的な映像が入り混じり、いたずらに見る者の思考を混乱させる編集方法は非常にあざとい。これではアッと驚くような仕掛けがあるのかと期待させておいて、結局たいしたことはなかったという失望感だけしか残らない。


実は「ナンバー23」を書いたのはウォルター自身で、犯した殺人の贖罪と遺書としてその小説を書い上に自殺を図ったが、死に切れず記憶喪失になったというベタすぎるエンディング。すべてを知り狂気から解放された彼に自首させるのは、良心は失っていないことを描きたかったからだろう。ホラー映画のようなテイストで実はヒューマンドラマだったという体裁は「シックス・センス」の線を狙ったのだろうが、流行に乗り遅れまいとした粗悪な模造品になってしまった。


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