こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ダーウィン・アワード

otello2007-11-30

ダーウィン・アワード THE DARWIN AWARDS


ポイント ★★★
DATE 07/10/10
THEATER メディアボックス
監督 フィン・タイラー
ナンバー 204
出演 ジョセフ・ファインズ/ウィノナ・ライダー/ジュリエット・ルイス/デヴィッド・アークエット
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


死に方、というのはその人間の生き方を濃密に反映する。アホな人間は、その愚かな生き方をまっとうするかのように、他人が見たら笑うようなシチュエーションで命を落とす。そのマヌケな最期の瞬間の気持を理解してくれる他人がいてこそ彼らの死も報われる。プロファイリングの専門家が彼らが息絶えた現場を検証することで、死んだ本人にしか分からなかった、いや、本人にも分からなかった真実をあぶりだす。そうすることで悲劇的な死すら、本人の真剣な想いが伝わってくるのだ。


連続殺人犯を取り逃がしたバロウズは警察をクビになり、プロファイリング能力を生かして保険会社の事故調査官になる。シリという女性調査官と共に保険金請求のあった事件事故を調べるうちに、思わぬ真相を暴いていく。


自販機の下敷きになって死んだ男の着衣の乱れと現場をちょっと見ただけで真実に言及するあたりは見事。その後も自家用車にロケットエンジンを積んで飛んでいった男やメタリカファンの2人組など、愚かだが愛すべき本性が次々とバロウズによって明らかになる。特に自動車の保険金を騙し取ろうとした男のエピソードは秀逸で、小道具や動物の使い方が笑わせてくれる。当のバロウズはリスク回避には神経症気味なほど気を使い、ストイックな生活を変えず、彼もまたある意味非常にアホな生き方。死んだ人たちとは正反対のようで相似形というねじれた人格を、ジョセフ・ファインズは終始しかめ面で演じる。


死体をモノとしか見ないシリや警官に対し、死んだ者の人生に思いを馳せながら共感を覚えていくバロウズ。プロファイリングという学問を通じて、人間観察の眼を磨いていた彼ですら、実在した人間のリアルな人生には心うたれずにはいられない。彼の心理の通じて、バカっぽいコメディがいつしか温かい人間ドラマに昇華する、その変容の過程が非常に滑らかで心地よい。ただ、ドキュメンタリーフィルムのディレクターは不要だった。


↓メルマガ登録はこちらから↓