こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

カンナさん大成功です!

otello2007-12-20

カンナさん大成功です!


ポイント ★★*
DATE 07/12/15
THEATER THYK
監督 キム・ヨンファ
ナンバー 257
出演 キム・アジュン/チュ・ジンモ/イ・ハヌィ/キム・ヨンゴン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


女は見た目が命。きれいになるためには全身美容整形も辞さない潔さが心地よい。デブでブス、存在するだけで暑苦しいヒロインが完璧な容姿を手に入れたとたん、世界のほうが変わる。男たちがひれ伏し、女からは嫉妬される。体にメスを入れ、きれいに変身することにもっと積極的になろうというストレートなテーマの陰で、親友や父親といった大切な過去まで捨て去らなければならない心の痛みをコミカルに描く。人間は中身という建前を全否定し、外見至上主義の世の中を肯定しつつも少し皮肉るバランスが小気味よい。


ルックスにコンプレックスを持つカンナは歌唱力を生かして人気歌手のゴーストシンガーをしている。ある日、恋心を抱いていた音楽プロデューサー・サンジュンに利用されていること知り、手術をを決意、スリム&ビューティになりジェニーと名を変えてサンジュンの前に現れる。


体に付いた贅肉はすなわちカンナのネガティブ思考に他ならない。こんな私が愛されるはずはない、だからせめて食欲は満たそう。恋なんて卒業したと周りに思わせるためにあえて身だしなみにも気を使わない。ほめてくれるのはテレクラ男だけ。だがすべて愛されたいという本心の裏返しで、自信のないことに対する言い訳でしかない。それが分かっていても踏み出す勇気がない、そんなカンナの繊細な思いがデフォルメされ笑いを誘う。


ジェニーとなったカンナはその美貌と美声でたちまちスターになり、サンジュンにも認められる。しかし、真実は決して口にできない。親友を失い、痴呆症の父を追い返したとき、初めて偽者のままでは本当の幸せをつかむことはできないと気付く。そして今の自分は過去の自分の延長に過ぎないとコンサート会場で告白する。大スキャンダルにもかかわらずすべてを正直にさらけ出すことでかえってファンも増えるというオチに、韓国社会の美人信仰と整形に対する寛容さ、逆に言えば「人は見た目が9割」という厳しい現実を垣間見るようだった。


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