こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

銀色のシーズン

otello2008-01-16

銀色のシーズン


ポイント ★*
DATE 08/1/12
THEATER 109GM
監督 羽住英一郎
ナンバー 8
出演 瑛太/田中麗奈/玉山鉄二/青木崇高
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


風を切るスピード、崖を下るスリル、そして林の中を抜けるテクニック・・・。白銀の山頂から滑り降りる快感を一気に見せるプロローグはスキーの楽しさを存分に味あわせてくれる。しかしその高揚感は長続きすることなく、主人公が自分勝手な振る舞いをすることで見事に帳消しにされる。それは若さゆえに許容される暴走の域を超え、ただの迷惑者。いくら心に傷を負っているからといっても、本人が甘えすぎている以上に周囲が甘やかしている。


流行らないスキー場でやりたい放題の、銀、祐治、次郎の3人組。ある日、銀はスキー場で結婚式を挙げるためにやってきた七海と出会い、スキーを教える羽目になる。銀にも七海にも口に出せないトラウマを抱えているが、やがてお互いが気になり始める。


3人組の生活にリアリティがなく、彼らの日常もまったく描かれていない。キャラクターを生かすために冒険やチャレンジをさせるのもいいが、その非日常を輝かせるためには平凡で退屈な日々に耐えるという描写が必要なはず。一応「雪山の何でも屋」だが、まともに営業しているわけはなく、当り屋をしたり助けを求める七海からカネをむしりとったりと、やっていることはヤクザ並みだ。また、密輸した高射砲で村の財産である氷の教会を破壊するなど、めちゃくちゃ。もう少しまともな設定を考えられなかったのか。


さらに七海は山で遭難、銀は吹雪にもかかわらず空から彼女を見つける。その上、銀はモーグル大会に飛び入り出場し、さすがに優勝こそしなかったがなぜか村人は大喜びで声援を送り、七海も応援に駆けつけるという予想以上の大甘の結末。映画を製作する上である程度のノリは必要だが、作り手だけが楽しんでいるような浅薄な盛り上がりにはしらけるばかりだ。「下ばかり見ていちゃだめ」と、スキーにも人生にも共通するセリフを銀は口にするが、この作品自体は興行成績という遠くばかり見すぎて肝心の足元となる脚本をおろそかにしている。


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