こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ピューと吹く!ジャガー THE MOVIE

otello2008-01-18

ピューと吹く!ジャガー THE MOVIE


ポイント ★*
DATE 08/1/15
THEATER アミューズCQN
監督 マッコイ斉藤
ナンバー 12
出演 要潤/大村学/高橋真唯/小木博明
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


心を揺さぶる音楽とは、オリジナリティにあふれる芸術とは、その問に縦笛で答えを出すのかと思えば、吹くのではなく2本の笛をたたいてリズムを取るだけ。いつかはロックンローラーの熱き魂までも溶かしてしまうほどの超絶技巧で至高の音楽を演奏してくれるのかと期待させておきながら、最後まで見せずじまい。結局、人気マンガの登場人物だけを借りたテーマも主張もないだらけたコメディになってしまった。原作を離れても、もう少し主人公が巻き込まれる珍騒動を通じて縦笛の魅力に目覚めて立派な笛奏者を目指す、という骨格の上で一発ギャグをちりばめる、くらいの工夫が必要だ。


ロッカーを目指すピヨ彦は芸能学校に入学するが、なぜかジャガーという男が講師を務めるふえ科に振り分けられる。しかし学校の方針でふえ科は廃止の危機、資金を得るためにジャガーらは黄金の珍笛を強奪する計画を練る。


あくまで不条理マンガをベースにしているとはいえ、単発のギャグをたまに出すだけのぬるい構成では退屈を禁じえない。せっかくピヨ彦という語り部を用意しているのだから、彼の目を通していかにジャガーやハマーといった変人たちの行動を描写していくかが監督の腕の見せ所だろう。とくに人気ロックバンドのポリシーまで変更させるほどのジャガーという男の強烈な個性がほとんど見られないのが残念だ。普段頼りないのにいざというときはすごくかっこいい、そんな期待を完全に裏切るという狙いはよいのだが、ならばそれに替わるカタルシスを味あわせてくれるエピソードを用意するべきだろう。


黄金の笛を殺し屋に奪われたりジャガーたちが奪い返したりするうちに大騒動になり、歌って踊るミュージカルの趣も加わる。しかしそれらも中途半端に騒いでいるだけで、俳優たちの研ぎ澄まされた「芸」というものには程遠い。作品は脱力系でもかまわないが、作り手まで脱力してしまってはまともな鑑賞に堪える映画が出来上がるはずはないのだ。


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